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今回リリースされる、スノウ・パトロールのニュー・アルバム『フォールン・エンパイアズ』(原題:Fallen Empires)。その前評判は尋常ではない。これまでに1,100万枚以上のアルバムを売上げ、「ラン」「チョコレート」そして「チェイシング・カーズ」といった、時代を代表する何枚ものシングルを世に送り出してきた彼らは、北アイルランドとスコットランド出身のメンバーから成る英国の5人組だ。中でも「チェイシング・カーズ」(※2006年の4作目『アイズ・オープン』/原題:Eyes Open 収録)は、104週という驚異的な長期間にわたって全英チャート75位以内に留まり続け、英国の民放『チャンネル4』の投票では<00年代を代表する曲>にも選ばれている。彼らがこれまでに発表してきたアルバムは、英マーキュリー音楽賞、グラミー賞、そしてMTVヨーロッパ・ミュージック・アワードにノミネートされ、3作目『ファイナル・ストロー』(原題:Final Straw)は、2005年にアイヴァー・ノヴェロ賞を受賞。誰の目から見ても、順風満帆な21世紀を送ってきたと言えよう。 米カリフォルニア州南東部に位置し、象徴的な地位を占めている『ジョシュア・ツリー国立公園』は、彼らが6作目のアルバムに着手するに当たって最適な場所のようだった。2010年10月、愛用のギターとラフなアイディアを1、2曲分携えて、砂漠に向かって車を走らせた彼ら。その1週間後には、ランチョ・デ・ラ・スタジオ(Rancho De La Luna Studios)での曲作りセッションを通じて、後にアルバム『フォールン・エンパイアズ』を構成することになる楽曲の土台を生み出していたのである。 数ヶ月をかけ、この5人組 ー ギャリー・ライトボディ(Gary Lightbody:Vo)、ネイサン・コノリー(Natan Connolly:G)、ポール・ウィルソン(Paul Wilson:B)、ジョニー・クイン(Jonny Quinn:Dr)、トム・シンプソン(Tom Simpson:Key)ー は、カリフォルニアを巡る音楽の旅に出発。彼らがレコーディング場所に選んだのは、サンタモニカにある<イーグルズ・ウォッチ>(Eagle's Watch)という名の奇抜なデザインの家で、見晴らしの良い窓からは太平洋の広々とした景色を臨むことができた。バッキング・ヴォーカルを務めたのは、LA(ロサンゼルス)サウス・セントラル地区コンプトンの<LA・インナー・シティ・ミサ・ゴスペル合唱団>。そこでレコーディングされた曲は、後に長年のコラボレイターである"ジャックナイフ"ことギャレット・リー(Garret Lee)の所有するスタジオでミックスされた。同スタジオがあるのはトパンガ・キャニオンの山奥の大農園で、昔はヒッピー・コミューン(※ヒッピーの生活共同体)として知られ、かつてニール・ヤングやウディ・ガスリーが本拠地としていた場所だ。 スノウ・パトロールの新たな冒険は、『フォールン・エンパイアズ』の一音一音の中に染み渡っていったのである。その結果完成したのが、全体として今までにないほど意欲的かつ包括的で、クリエイティヴな作り手としてのこのバンドを、もう一度定義し直すことを約束したアルバムであった。 「僕らとしては、ものすごく意欲的な作品を作りたかったんだ」と語るのは、ギャリー・ライトボディ。彼は今、絵のように美しいトパンガ・キャニオンにあるギャレット・リーの自宅プール・サイドで、ワイングラスを傾けている。「アーケイド・ファイアの最新作(『ザ・サバーブス』/原題:The Suburbs)を聴いて気づかされたんだよ、僕らももっと大きな賭けに出なきゃな、ってね。あれは素晴らしかった。これまで作ったことのないような作品を作りたいと、僕らも心に決めたんだ」。 「僕らはより遊び心のある、前より粗削りな曲を書き始めた。因習にとらわれるんじゃなく、自分達がバンドとしてやりたいことをやれるだけの勇気が、僕らにはあったんだ。時にはツラいこともあったよ。大抵の場合は、居心地の良い安全地帯から足を踏み出していたからね。でもそうすることによって、素晴らしいアルバムが生まれたと思ってる」。 まず一聴すれば、彼らがこの『フォールン・エンパイアズ』で新たな領域を切り開いていることがすぐに分かるはずだ。疾走する、ディストーションのかかったエレクトロ・ギター・リフ。クラブ仕様のドラムスに、ギャリー・ライトボディが紡ぐ傷心を綴った歌詞と、それに呼応するアンセミックなコーラス 。これは、LCDサウンドシステムの『サウンド・オブ・シルバー』(原題:The Sound Of Silver)や、U2の『アクトン・ベイビー』(原題:Achtung Baby)、そして前述したアーケイド・ファイアの『ザ・サバーブス』といったアルバムからヒントを得ている作品と言える。実験性を帯びているにも関わらず、同時にこの『フォールン・エンパイアズ』は、スノウ・パトロールの魅力の本質を失ってはいない。多種多様な感情の織り成す起伏は、今作でも健在。例えば、フェスで披露される瞬間を待ち受けているかのような、ソウルフルな「ニューヨーク」があるかと思えば、秋のロマンスを彩るサウンドドラック「ザ・ガーデン・ルールズ」もあるのだ。 「歌詞にはすごく満足してる」とギャリー。「僕はいつも、個人的な経験をもとに歌詞を書こうと心掛けてるんだ。「ニューヨーク」は向こうで僕が付き合っていた女の子について歌ってる。僕らはお互いに強く想い合っていたんだけど、同じ時間に同じ場所にいたためしがなかったんだよね。"逃してしまったチャンス"が、この曲のテーマなんだ。でも今回のアルバム全体を占めている感情は、"家"への想いだね。つまり、僕の子供の頃の話(「ザ・ガーデン・ルールズ」)とか、ギャレットの子供達(「Lifening」)とか。"家"というのが、全体のテーマになってるんだ」。 ギャリーの歌詞やポップなフック以外の部分でも、彼らはバンド全体として、クリエイティヴな筋肉をほぐしてきた。本アルバムの表題曲や「サイン・オブ・ライフ」といった曲では、ネイサン・コノリーはギタリストとして、ほとばしるようなスタジアム級のリフを披露。また「アイル・ネヴァー・レット・ゴー」では、ディストーションのかかった渦巻くシンセとテクノ混じりのエフェクトとで、電撃的な攻撃を仕掛けている。 「今回のアルバム制作で一番エキサイティングだったのは、これまでよりも自分を表現できていると感じられたことだった」と語るネイサン。「今回は、自分のパートのレコーディングに関して言えば、すごくクリエイティヴな面を発揮できるだけの自信が持てたんだ。それから僕らは、従来とは違ったレコーディング方法も試してみた。今までは自分のパートを予め書いておいて、それをギャリーの曲に合わせる形を取っていたんだけど、今回はギャレットがとにかく曲をかけて、そして「さあ弾け」って。インプロ(即興)で弾いてたんだ。立ってる状態で考えなきゃならなかったんだけど、それが功を奏したんだよね」。 後にギャリーが認めているように、彼らはレコーディング・セッション中に、自分達の"内なるダンス猿"を解き放とうと決意していたという。「「アイル・ネヴァー・レット・ゴー」は、正真正銘の夜遊びナンバーなんだ」とギャリー。「本格的なエレクトロなんだよ。僕らの音楽には、これまでも常にダンスの要素が含まれていた。でも今回は、それをより前面に押し出しているんだ。今度のアルバムの曲が、クラブでかかるのを楽しみにしてるよ。きっとフロアが盛り上がるだろうからね。僕らの曲がクラブでかかると、フロアにいた人達が引き上げてしまうのをよく目にするんだ。僕らはそういうタイプのバンドじゃない、って。「アイル・ネヴァー・レット・ゴー」は、それを覆すかもしれないよ」。 その他、『フォールン・エンパイアズ』の戦闘準備アンセムには、騒々しいパーカッションによる攻撃が備わっている。それはジョニー・クインがLAの地元楽器店で買い集めた、数十に及ぶ異なる打楽器から打ち鳴らされるサウンドだ。「サンタモニカのベニス・ビーチで見たドラム奏者達にインスピレーションを受けたんだ」とジョニー。「彼らはいつもそこで演奏していたんだよ。その中には素晴らしい奏者もいれば、ヘタクソな人もいた。でもみんなそれぞれ違った打楽器を使って、それぞれ異なるドラミング・スタイルで叩いてたんだよね。それで僕はとにかく地元の楽器店に足を運び、色んなドラムキットを手に入れた。そしてそれを叩き、ドラムの音の上にドラムの音を重ね、そのまた上にドラムの音を重ねていったんだ。その全部を叩くのは、すごく大変だったよ。最後には両手が腫れ上がってしまったんだ」。 後にカメオ出演的に、このアルバムに参加したゲストの1人がマイケル・スタイプだ。(ギャリー曰く「彼は、僕が"作家ならではのスランプ"に陥っていた時、すごく支えになってくれた。そしてこれまで僕がやってきたことは、どれも更に追い求めていくだけの価値があると言って僕を励まし、自信を与えてくれたんだ」)。それからクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのトロイ・ヴァン・リューウェン。(ネイサン曰く「彼とはLAで「コールド・アウト・イン・ザ・ダーク」って曲をレコーディングしたんだよ」)。またLA・インナー・シティ・ミサ・ゴスペル合唱団も参加。(「彼らのおかげで「アイル・ネヴァー・レット・ゴー」とかの曲に本物のソウルを注入してもらえた」とギャリー)。そしてリジーが、「ザ・ガーデン・ルールズ」をはじめとする4曲にヴォーカルで参加してもらうため、招かれている。 結果、本作全体は、スタジアム級のアンセムだけでなく、実験的なアイディアも豊富なバンドとして、スノウ・パトロールを際立たせるアルバムに仕上がっている。『フォールン・エンパイアズ』は、プラチナ・ディスクに輝いた2008年の『ア・ハンドレッド・ミリオン・サンズ』(原題:A Hundred Millions Suns)や、ミリオンセラーとなった2009年のコンピレーション盤『Up To Now』に続くアルバムとして正にうってつけの、重要な作品ではないだろうか。スノウ・パトロール史上における最高傑作と言うほかはない。 「僕にとって今作は、本当のアルバムだと感じられるんだ」とギャリー。「成熟した作品であり、楽しさに満ちた作品でもある。僕はこれまでもずっと、自分にインスピレーションを与えてくれる作品と肩を並べられるようなアルバムを作りたいと思っていた。そして今回の作品が、そうなったらいいなと思ってるよ。このアルバムのことを僕は心から誇りに思ってるんだ。聴いているとワクワクする。それって本当に素晴らしいことなんだよね」。
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