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説明文

月灯りを浴びて、初期よりも人間に近づいた体表面がわずかに光沢を放っている。どこから沸いてきたのか、と思わされる数のヒューマノイド型が重なり合い、隙間に水を流すようなモーションで結合してゆく。数十分の後、薄明の中に立ち上がった影は建造物となっていた。古めかしい鉄筋コンクリート作りの小柄な2階建ビルには、手書きを模した大きな看板が掲げられる。「犬の耳を掴む」。映画館の内部で燈った照明は、安堵の吐息を思わせるオレンジ色の光を外の闇に落としていた。2人分のチケットを握った女が、疲れた足取りで館内へと歩み入る。その顔には、喜びとも哀しみともつかぬ、微笑に似た表情が浮かんでいた。
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