村外れに続くルピナスの道 その奥に佇む古い館には 不思議な眼を持つ母と娘が暮らして 穏やかに過ぎる時間を愛した その眼はこの世にない存在を映して 彷徨う魂を受け入れた 慈愛に満ちた母は彼らの声に 耳を傾けては心癒し そして最後には 往くべき冥界へと送りだした―― 聡明な彼女に 焦がれた男の霊がいた 際限なく 根源なき欲望は果てなく 叶わぬ恋と知る程に “拒む目も声も嗚呼… 全てをこの手にしたい” その眼は虚空の中 狂気の色映し 酷薄な憧憬募らせる 我を忘れた 彼は迷うことなく 恍惚として契約を交わす 全て欲望の為… 悪魔へ魂を売り渡した―― ふと突然に 母の足が縺れた 顔を歪めて 力なく膝から崩れ落ちる 目を見開いて もがき喘ぐ視界の先 高らかに男の霊が笑っていた その眼は何もかもを 冷たく見下ろして 呪われた言葉を投げ棄てる “共に醒めない 凶夢を見ようじゃないか?” やがて母はこの世を去り 娘の瞳は濁り 村は荒れ 濃霧が覆い隠した――
