雨が降れば きみは傘さして 通りの向こうの雫の軒で 泥はねたスカートを膨らまして 茶色い犬のとなりに並んで 雨が止めば きみに陽がさして 表紙の向こうのイチイの脇で 照り返すフレームに目を細めて 錆びたトタンの波を数えて それにつけてもちいさな世界 たとえばきみがここにいなくても 泣いたりなんかしないよ 待ちぼうけ 待ちぼうけ 銀色すべる列車 匙すべるコーヒーゼリー 入日かな 雲が行けばきみは駆け出して 泥濘こえて石のむこうへ はみ出したさぼてんの夏を抜けて 灰色の右の空にもたれて それにつけてもちいさな世界 たとえばきみがここにこなくても 嘘つきなんていえないよ 待ちぼうけ待ちぼうけ ゆびきりしてみたって 針千本 大きい手に 入日かな 待ちぼうけ 待ちぼうけ 煙突ずれるジェット 針すべるマーティンデニー 入日かな