コルビー・キャレイの3枚目にして最も興味をそそられるアルバム『オール・オブ・ユー』を聞くのは、2章目まで読むのを楽しんだ本のページをめくって、第3章で待ち受けているものに驚きと喜びを感じるような行為である。
まず最初に、この作品は確実に、間違いなく、キャレイの宝石である。2007年のデビュー作『ココ』の一番初めの音から、まるで音の喜びの花束のように溢れ出た彼女の資質は、2009年の『ブレイクスルー』で花を咲かせ、そして『オール・オブ・ユー』の全ての曲から放たれている。
だが今、それらは実に豊かな感情と、才能あるアーティストが学んだことを音楽に向けることができた時にだけ生まれる洞察力に溢れている。
考えてみて欲しいーー『ココ』は全米チャートに5位でデビューし、マルチプラチナムの壁を突破した。彼女のファースト・シングル “バブリー”は、一世代の想像力をつかんで、デジタルで史上最も売れた曲の一つとなった。そして『ビルボード』誌はコルビーを、「ブレイクスルー・アーティスト・オブ・ジ・イヤー」と評した。それに合わせたかのように、『ブレイクスルー』は全米チャートで一位を達成、グラミー賞でも2部門でのノミネートを獲得した。また同年に、コルビーはジェイソン・ムラーズとテイラー・スウィフトとのコラボレーションで、グラミー賞を2つ受賞している。2011年NFLシーズンの開幕式では国歌を斉唱、ノーベル平和コンサートでもパフォーマンスを披露した。コルビーと彼女が作ったオリジナルの音楽は、綿のコマーシャルでもフィーチャーされ、ABCファミリー・チャンネルの『25 Days of Christmas』という番組では、彼女が作曲とアレンジを手がけたテーマ曲が流された。それだけでなく、彼女はサーフライダー基金、セイヴ・ザ・ミュージック、それから最近スポークスパーソンとなったヒューメイン・ソサエティ等、慈善活動にも手を広げている。
こういったことの全てが、まだ羽を伸ばし始めたばかりのアーティストによって達成された。彼女の音楽と安心させられる人柄は、西の地平から昇る太陽のようにリスナーの心を温めたが、彼女はこの人生の冒険を楽しみ続けている。これら全てのことと、特に新しい恋愛が、『オール・オブ・ユー』に重要な前進を示す深みを与えている。
“『オール・オブ・ユー』は、より進歩した私なの”
コルビーは説明する。
“私は自分の音楽を、アコースティックで、陽気で、前向きなものにしたいの。新曲には、私の大好きな明るいフィーリングと、カリフォルニアのヴァイブがあるわ。でも私自身の経験から書いた曲も入っているわ”
これらの経験の最も重要なものの中に、ジャスティン・ヤングとの恋愛も含まれている。ジャスティンは彼女のショーのバックで歌っていて、二人は長年一緒に仕事をしてきた。その後、彼女が新曲「ブライター・ザン・ザ・サン」で歌っているように「始まりはこんな感じーー心臓に稲妻が落ちる」のである。
“私達がお互いのことを好きだって気づく前に、彼は2年も私のバンドにいたの”
彼女は笑いながら言う。
“このアルバムの大半は、私達のことについて書いたわ。私達のアップダウンをね。曲は全て人生経験についてなの。だから、このアルバムは多分今までよりも成長していて、ある程度は賢くもなっているんじゃないかと思うわ”
その賢明さは、「シャドウ」という曲に表れている。彼女がジャスティンと書いた曲で、ボーイフレンドから与えられるべきものをもらっていない友人についての曲だ。それとは違う形で、コルビーとトビ・ガッド作の今作のファースト・シングル “アイ・ドゥ”の中にも、賢明さが見られる。
“「アイ・ドゥ」のミュージック・ヴィデオの台本を監督からもらった時、誰もがウェディングのシーンをやりたがったの”
と、コルビーは言う。
“でもこれは結婚の曲ではないのよ。「愛してる」って言うことについての曲なの。これもジャスティンに関する曲なんだけど、誰かに「愛してる」と言いたい、そしてその人と一緒に年を重ねて行く自分を思い描きたい、っていう曲なの”
シンガーとして、ライターとして成長するコルビーの魅力が、彼女のクリエイティヴィティの核になっている前向きな精神を減らすことは決してない。だが『オール・オブ・ユー』では、コルビーとライアン・テダーとラッパーのコモンが共同で作曲し、パフォーマンスをしている「フェイヴァリット・ソング」の楽しいスタイルから、「イン・ステレオ」のかすかなカントリー風味、フラメンコが染み込んだ「ブライター・ザン・ザ・サン」まで、その精神が過去最高に幅広くなっている。最高のビーチ・パーティのエネルギーがある「ブライター・ザン・ザ・サン」は、『オール・オブ・ユー』の幕開けとなる曲で、一目惚れについての曲だ。
“私は普段は、楽な感じでアルバムを始めるのが好きなの”
と、彼女は言う。
“でも「ブライター・ザン・ザ・サン」は、パンチのある曲。すごくアップテンポでハッピーなの。私のマネージャーに、一曲目にするようにってリクエストされたんだけど、彼は正しかったわ。この曲は皆を最初から盛り上げて、次に何が来るのか興味を持たせることができるから、最高なの。曲のそれぞれのパートが、違う楽器で始まるの。決して同じところに留まらない曲だから、もっと次が聞きたいってリスナーに思わせるのよ”
同様に、映画『ジュリエットからの手紙/Letters to Juliet』で使われた”ホワット・イフ”も、初恋が、それが現実であれ空想であれ、何年も続くような感情をよびおこすものであることを伝えている。
「私はやったことがあるし、誰もがやることだって分かってるわ」
コルビーは認める。
「遠くから誰かを見て、あるいは実際に会って、その人がずっと思い描いていた人にそっくりなの。それで、その人の名字を自分の名前として書き始めるの。よく高校でやるように、ノートにその男の子の名字を自分の名前として書くのよ。空想にふけっている時にやる、おかしいけどキュートなことよ。それでも考えてしまうの、もし私達が一緒になる運命だったら? もしも私達が一緒になるために生まれたんだとしたら?って」
おそらく最もさらけ出している曲は、アルバムのタイトル曲だろう。コルビーとジェイソン・リーヴスが書いた曲で、友情という強固な基盤の上に築かれた愛と、裏切りの痛みすら乗り越えることができる共感が主題になっている。
「私の曲や私が曲にした誰かのことを、皆がどう思うかを心配して、控えることはしなかったわ」
彼女は言う。
「何も抑えなかった。人はどんな状況でも、秘密を持ったり、本当の自分を隠したりせずに、もっと正直でオープンになる必要があると思うから。それがこのアルバム全体のコンセプトなの」
5人のプロデューサー達と、クリエイティヴなミュージシャン達と共に、コルビーは『オール・オブ・ユー』を多次元の自画像に仕上げた。だが、ベテランも新人も含めた多くのアーティスト達とは違い、彼女はバランスだけでなく、新しい領域に進む嗜好も持ち合わせている。この14曲のオリジナル曲の中で、これから彼女が進んで行く道を示しながら、コルビーはこれまでに見せたことのなかった形で自分自身を見せている。
“最初に曲を書く時は、何も予期していないものだって言うでしょう”
彼女は振り返って言う。
“『ココ』の曲は、家で、友達のジェイソン・リーヴスと楽しみで作ったの。『ブレイクスルー』は、自分のやりたいことと自分に正直でい続けながら、皆の提案にも心を開きたいと思う微妙な部分があったの。正直、『オール・オブ・ユー』での仕事ほど、この仕事を真面目に捉えたことはないわ。今作は、私が今までにやった何よりも、もっと私なの」
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