FATBOY SLIM、本名Norman Cook。ブルームリー生まれ、レッドヒル育ち。大学入学と同時にブライトンに移り住み、あっちこっちでDJをやり始める。古い級友の Paul Heaton から電話を受け、彼のバンドHousemartins でベースを弾くことになる。彼らは1986年にアイズリー・ブラザースの"Caravan of Love" をカバーしてブリティッシュ・ナンバー・ワンを記録。やがて解散したが、Norman はダンス・ミュージックを溺愛していた為ブライトンに戻り、Eric B and Rakimの"I know you Got Soul" でリミキサーとしての第一歩を踏み出す。そして Beats International を結成。イギリスでナンバー・ワンになった "Dub Be Good to Me"を発表する。が、すべての歯車が狂い出す。・・・離婚を経験し、神経衰弱におちいり、Norman は2年ほど仕事から遠ざかってしまう。
そんなある夜、友達に連れて行かれたクラブで、彼はエクスタシーを味わう。その夜彼が聴いたのは、Robert Owens の歌う"I'll Be Your Friend" 。そしてすべてが一変した。トロンボーンを抱えたアメリカ人 Ashley Slater とともに Freakpower を結成、彼らの"Turn On, Tune In, Cop Out" はもう少しでブリティッシュ・ナンバー・ワンになるところまで行った。が、彼らのセカンド・アルバム "More Of Everything For Everybody" はファンク、ブレイクビーツ、そして悲鳴のような毒舌満載の憎いフュージョン・・・まったく売れなかった。
その頃から Norman は、何種類もの名前を使い分けてレコードを制作するようになる。ハンドバッグには Pizzaman、ハウスには The Mighty Dub Kats、トリップ・ホップにはFried Funk Food、そして、1995年からは Fatboy Slimというように....。Fatboyの名前の由来は「40年代に "Baby, I Want A Piece Of Your Pie"というヒット曲で有名になったルイジアナのブルース・シンガー」だという。ファースト・シングルのタイトルは"Santa Cruz"、Damien Harris による Skint レーベルからの初リリースであった。程なくしてThe Sunday Social(The Chemical Brothers の本拠地)をはじめ、ロンドン中のクラブでこの曲がかかりはじめる。やがてブライトンに、彼が専属 DJ をつとめる The Big Beat Boutique がオープン。それが当たりに当たり、ロンドンから多数、人が訪れるようになる。一方、Fatboy Slim のセカンド・シングル"Everybody Loves a 303" が好評のうちに発売。Edwin Starr の "Everybody Needs Love" に強力なブレイクビートを加えた、そのサウンドはその年最大のダンス・ナンバーのひとつとなる。
その後もFatboy Slimはすごい勢いでクラシック・ナンバーを出し続ける....狂気のような "Punk To Funk"、力強い "Going Out of My Head"、そして正気とは思えないような「ラテン・アシッド」"Everybody Loves A Carnival" 、そしてデビュー・アルバム "Better Living Through Chemistry"と続く。
「どんなことになるか見てやろう、という気持ちでアルバムを出してみたんだ。大々的なリリースじゃなかったけど、口コミでどんどん評判は広がっていってね。」 そして翌年、5月の時点で Norman は、リミックス(故人となった親友 Wildchild のヒップなハウス・ナンバー"Renegade Master"、インディーのインディアン Cornershop の "Brimful of Asha" 、そしてあの Freakpower の "No Way")が大ヒット。そして夏には、遂に記念すべきシングル"The Rockafeller Skank"を出す。この頃には日本でも確実に火が付き、秋には次のシングル"Gangster Trippin'"、セカンドアルバム"You've Come A Long Way Baby"へと続く、快進撃は周知のとおり。ヨーロッパで、そして、ここ日本でも大ブレイク、年末の来日公演も異常なほどの盛り上がりをみせ、まさしく「98年を象徴する」存在となる。
99年に入ってもDJに、リミックスにと相変わらずの活躍ぶりは続くが、Normanは複雑な表情を見せる。
「成功するのはいい気分だけど、うまく行かなくても、もう落ち込んだりしないよ。時がたつにつれて、どんどん怠け者になっていく気がするんだ。前よりも仕事は速くなっているんだけど、仕上げる前に疲れちゃうんだ...」 やがて届けられるであろう新しい音の事を想うと楽しみで仕方がない、そんな彼だが、きみの秘密を教えてくれない? と聞くと、少し考えて彼はこう答えた。「動物好きで家庭的、入れ歯は一本もなし」と。(笑)
(本文は、オリジナル・バイオグラフィー和訳を元に、再構成したものです)
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