世界の電波とネットを席巻する新種のポップスターがいる。より正確には、いつの間にやら各種チャートのトップを飾って大勢の心と頭を揺さぶろうとしている意識の高いポップスター、だ。この謎めいた存在の実態が、皮肉なアンセム「ヒア」で勢いに乗る(デビュー当時)18歳のアレッシア・カーラ。The Fader(オンライン・メディア)でお披露目された「ヒア」は一週目で合計50万回以上再生され、その新鮮さと洞察力に対する賞賛が広がっている。
「ヒア」は容赦なく自伝的な内容だ。「“ヒア”は実話よ」とアレッシアも告白している。「あれはパーティ・ソング、だけどパーティ・ソングとは真逆なの。完全に私のこと。パーティで会場の隅っこで、居心地悪そうにキョロキョロしてる人に呼び掛けている。壁の花たちが思ってることを、この曲が語っている気がするの」
Sebastian Koleと共作した「ヒア」は、突っ張ってもいるし、警告めいてもいる。気が進まないままパーティに参加したものの、その場を去るまでひたすら時を数えている人の視点で書かれたものだ。「ヒア」はバカ騒ぎに狙いを定め、誰もが隠し持っている内向性に触れた歌詞がピリッと効いている。<興味なさそうに見えたら、ごめんね / 話を聞いてなさそうに、どうでもよさそうに見えたら / 正直、ここは私には用が無い>、<つまらなそうな顔してても許して / 社交性のない悲観論者、でも、だからっていつもなら文句は言わない>、<ホントのところ、家に独りでいるほうが好き / 私の幸せなんか気にもしてくれない人たちと一緒に、この部屋にいるよりも>
10代の声が発するものとしては強烈、というより、アートの名の下で誰が書き記したものであっても強烈だ。アレッシアの大人っぽいペンさばきと、その等身大を超えた声は相性がいい。彼女はめまぐるしいカメレオンのようで、堂々たる多才さは彼女をひとつの脅威たらしめている。早い話が、アレッシアには自信を持つだけの理由があるのだ。それでいて、大都会にいながら本人は未だに恥ずかしがり屋の小さな町から出てきた娘である。「カナダのオンタリオ州ブランプトンから出てきて、まさかこんなことになるなんて思わないもの。むしろ、“私に会ってくれる人なんかいるのかしら?”って思ってた。起きたことが把握しきれないわ。Sebastian やプロデューサーやレーベルとのケミストリーとか。Def Jamは私のやろうとしていることを理解してくれた。私は自分の音楽がカッコよくて、色んな影響を反映させたものであってほしい。ドレイク、エイミー・ワインハウス、エド・シーラン…でも、やっぱり新しいもの。Def Jamは、私に、意味のある前向きなことを説教臭くならずに言う機会を与えてくれた。こんなにすべてが自然で有機的に感じられるとは予想してなかったわ。その進行の速さも信じられない」
アレッシアは新鮮さと老練した魂と、新人と熟練工を、同等に持ち合わせている。その歩みは、速い。追いついて理解できるかどうかは、みなさん次第だ。
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