愛と名誉のために

　 “ Story Woman ” 最愛の人は私にキスをして 戦場へと向かう輸送機に乗り込む 必ず生きて戻って来る 私の心は彼を待ち続けると誓った ポツポツと時より届く 時間差のある短い手紙 彼のいない時間は 何故か流れがとても遅い 増していく寂しさ それを包むかのように 予期せぬ新たらしい出逢いが 私の中に差し込む 彼の笑顔は私の心を温めた 戦場の彼を忘れたわけではない ただ 新たな愛が芽生えただけ 罪悪感と喜びが交錯する 心の中で戦いがおこる 戦場の彼を愛し続けると誓った けれど 新たな愛もまた真実 言い訳はしない 私には待ちきれなかった ただそれだけ 新しい恋人に抱かれる夜 心は複雑で涙も流れた けれど 寂しさからの開放は 何にも代えがたい どんな代償を支払ったとしても “ Story Man ” 長い船旅 身体は疲れ切っていたが やっと彼女の元へ帰ることができる 戦場ではあっという間に時は流れたが カレンダーでは一年以上が経過していた 彼女に早く会いたい それだけだ 毎晩 彼女の写真を抱いて寝ていた ずっとその瞬間を待ち望んでいた タラップを降りながら 彼女の姿が見えた時 心は喜びと不安で揺れた 隣にいる若者は誰だ？ かけよる彼女の手を握りしめ 再会の喜びを交わしあったが 優しげに 申し訳無さそうに 許してほしい 傷つかないで 心は痛み 胸が締め付けられる 戦場での苦しみとは違う痛みだ なんとなく予感はあった 荷物を背負ったまま 曇った空を高く仰ぎ 大きく息を吸い込んで ゆっくりと吐き出す それでも 彼女を愛している 君が幸せであることを 優先順位の上とすることとしよう 無意識に握りしめたままだった 彼女の手を離した そして二人に別れを告げる これからどうするの？ その彼女の問には答えずに歩き出す そんなこと考えつくわけもないだろ お幸せにとも言えなかった とにかく早くどこか 冷たい飲み物と美味いパイを出す ゆっくりのんびりできそうな そんな店をみつけたかった