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説明文

カリブ海に浮かぶ岐阜県とほぼ同じ面積の小さな島。キューバの下に位置するジャマイカ。人口の92%が黒人。6%が混血。ほとんどが奴隷貿易でアフリカから連れてこられた人々の子孫ということになる。英領植民地から戦後英国自治領となりようやく主権国家として独立が認められたのは1962年。米合衆国と同じように二大政党がそれぞれ政権を担当するが政情定まらず治安も悪く武装警官と武装ギャングが入り乱れる首都はキングストン。そこでボブマーリーは英国人を父としてこの世に生を受けた。 生まれてすぐに父からは黒人の母もろとも見捨てられ人生の始まりから過酷な現実と向き合うことになるボブマーリーだったが彼には天賦の才があった。音楽。説得力のある歌声。創造性。彼のアイデンティティを支えるのは遠い故郷アフリカ。黒人の神として掲げるJah。ラスタファリズム。 音楽における才能や情熱をのぞけば彼とて何処にでもいる普通のレゲエおじさん(といっても亡くなったのは36歳というから見た目の印象よりも遥かに若い)。女房に対して嫉妬深いわりには自分は浮気する。何処にでもいるタイプだ。 しかしひとたび大観衆を前にステージに上がれば彼は忽ちJahの伝道師。人々の魂を揺さぶり踊らせる最強の祭祀王となる。ジャマイカでの彼の影響力は絶大だ。 選挙戦を前に内乱寸前の荒れた国内の空気を鎮めるために「Smile Jamaica」と名づけたコンサートを企画するが政争に巻き込まれ或る日暴徒によって二発の銃弾を受ける。奇跡的に軽症で済んだが周囲からはコンサートの中止を勧められる。悩んだ末に彼が下した決断はコンサートの決行。そのオープニング曲は「WAR」… その後身の危険を避けるためにロンドンに向かう。時は怒れる若者たちのパンク勃興期。ボブマーリーのメッセージ性の強いレゲエは彼らにも影響を与えた(クラッシュやポリスなど)。この地でボブマーリーとウェイラーズはより宗教性の強いアルバム「EXODUS」を制作。 妻リタマーリーの前でくつろぎながらギター一本で「Redemption Song」を弾き語りするボブマーリー。妻が云う。 「そんな歌いつ作ったの?」 「ずっと前のことさ」 そう。それはきっと何万年も昔からこの宇宙に存在していた歌なのだ。ある日それをボブマーリーが偶然インスピレーションとして受け取ったのだ。宇宙の意思によって書かれたその歌。この「贖罪のうた」を。─そんなふうに思えるほどこの曲はシンプルで優しく素直に僕らの心を振るわせる。 「神」とは手の届かないもの。何処にも存在せずしかも此処に在るもの。「神を信じる」とは至高の存在を想定し我が肉体に宿し以て自らを律するということ。その存在の考え得る限りの最良の部分と繋がる時そこに一人のカリスマが生まれる。その時彼はすでに一人のキリストだ。 ボブマーリーの36年という短い生涯の中にもそのような崇高な光がきらめく瞬間があっただろうか?約束の地カナンを目指すに未だ遠いジャマイカという荒涼とした荒れ野に立ちその闇を照らすほどの光がその肉体からきらめき出す瞬間が。
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