AWA
このページをシェア

説明文

「嵯峨野花譜」を昨日で読み終えました     やはり最後の章では自然と涙が...... 主人公の若い胤舜は幼い頃に別れ離れとなった母親萩尾とまだ一度もあったことのない父の幕府老中水野忠邦の隠し子を秘して京の大覚寺に預けられて得度し、寺の花務職の華道未生流二代目/不濁斎広甫(ふだくさいこうほ)に活花を教えられていた    胤舜の活花の才は師も三人の兄弟子も認めるものであり、いずれは彼が三代目を継ぐと思われるほどの力量であったが師の広甫は「人の心を知る修行が必要」と説き、師の命じるところで花を活けよと言われたところから物語が始まる     物語の第一章で胤舜が最初に命じられたのは「昔を忘れる花を活けてください」と身分のある女人に言われ、そのひとが母親であることを知りつつ二輪の白椿と松の枝で無理に忘れようとするよりひとつの思い出を大切にしたいと伝える   また冨商の若い女房が「わたしのこころの裡にある亡き弟のような花をいけて欲しい」とか公家の姉妹との「花くらべ」の艶と淡い想いの話、水野忠邦を恨む女に胤舜が拐かされ、「闇の中で咲く花を活けよ」と強制されるなど、師の広甫や三人の兄弟子、元侍で寺男になった源助の助けを借りて胤舜は活花を通してこころの修行を行なっていく    最初の頃の胤舜は本当の悲しみも喜びも、憎しみや憤りも妬みも知らないと言ってたが、最終章の「花のいのち」では余命幾ばくもない母の萩尾のために自分自身の想いを示す活花をし、二人の最後の別れではとどめもなく涙が出てしまいました    活花を通しての物語の中で語られる古事や花に因んだ和歌、悲しみと憎しみや妬みのある世の中ではあるけれど、活花と人の繋がりによって胤舜が成長する過程が素敵な物語     葉室麟さんの作品は何気ない仕草のなかで人を思いやる優しさや家族愛が溢れるものがあるから好きです わたしが花を活けることはないけど活けるとすれば質素な一輪挿し  作品の何編かは映像化がされているけど、わたしにとっては小説の中の作品が一番と考えてます   
…もっと見る
はじめての方限定
1か月無料トライアル実施中!
登録なしですぐに聴ける
アプリでもっと快適に音楽を楽しもう
ダウンロード
フル再生
時間制限なし