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説明文

管理されることが当たり前のように教育されてきた大人たちにはそうではない子どもたちの気持ちなど分かるまい── 様々に光輝く可能性のある原石の数々をすべて一つの鋳型に押し込めるような教育によってこれまでどれだけ小さな才能の芽が潰されてきたか知れたものではない。 ある一定の年齢までは子どもにとって大人は絶対的な存在だ。それに逆らうことが出来るほど強い自律心を持てる子どもなどほぼいないだろう。鋳型を嫌う子どもたちには自分の居場所を学校の中に見つけることほど難しいものはない。 管理される教育に適合できない子どもたちはこの管理されることが当たり前の社会においても適合できない出来損ないのように扱われそうしてあぶれた子どもたちのためのセーフティネットは今の学校教育というシステムの中には存在しない。 文科省の調べによると2023年度の小中学校の不登校児童の数は全国で30万人弱(その数は自衛隊員の総数の2倍に相当する)。前年比でも5万人の増加。自殺者の増加とともに不登校児童の増加はコロナ以降に起きている社会的現象の一つと云える。 コロナ対策として教育の現場でも踏襲されたマスク着用や黙食などの新たな強制力の強いルールは元々あった管理=教育という名の一つの暴力的システムとしての顔を露骨に顕在化させるものだった。この管理という性質が持つ本来の暴力性或いは非合理性に対する忌避感こそがコロナ以降の不登校児童の増加という現象の一つの理由として考えられる。 感染症対策という名目で様々な行動規制がかけられた状況にも日本人の多くは素直に従いそれを守り続けた。それが明らかに科学的な根拠も無視した馬鹿げたものであったにも関わらず。まるでふざけた大人の子ども騙しの嘘を信じる素直な子どものように。それが学校教育によって管理されることにすっかり慣らされてしまった今日の代表的な日本人の姿だ。‘上’からの指示であれば疑うことも考えることもせずそのまま云われた通りに行動する。日本の長い管理教育の歴史が生み出した一つの悪しき成果こそこの均一な日本人の総愚民化だ。このような性質の国民にとって最も適した政治形態は民主主義ではない。議論の必要もない。必要なのは上から下へのトップダウンの指示のみ。まさに全体主義だ。 そう考えれば不登校の子どもたちはこのような管理教育という悪習がもたらす社会的な弊害に敏感に反応して静かな抵抗をしているのだとも云える。ただ彼らは全体を把握できるだけの客観的な知識もそれを語る言葉も持たされていない。そしてそれぞれが孤立した一人きりの洞窟の中で苦しんでいる。30万人に及ぶそうした彼らの孤独な抵抗に今この社会は真摯に向き合おうとしているだろうか? 出来損ないは管理教育に適合できない彼らではなく管理教育というシステムそのものでありそれによってすっかり飼い慣らされてしまった僕らすべての大人の側なのだ。
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