ハリウッド界の女王、ロメオ。革職人のジュリアン。10歳も違う2人を結び付けたのは巨匠ベリアルの映画撮影現場だった。ジュリアンは、そのセンスで注目されて、映画の一部でその革工芸の技術を使った、衣装や小道具を担当した。一方のロメオは天上天下を統べるハリウッド界のイコンであり美のサイボーグであった。女優ロメオは純粋で繊細なジュリアンの人柄とその大胆で緻密な作品のギャップに惹かれ、監督ベリアルはジュリアンの革に対するフェティッシュなまでの変態性を見つけて、愛でた。こうして、ジュリアンの知らないところで人界の神々の思惑と狡猾がジュリアンの人生を玩ぶようになるのであった。当のジュリアンは、撮影に使われて戻されたロメオの衣装を修繕しつつ、思わずその衣装に顔をうずめて革の匂いに恍惚としていた。果たして、ジュリアンはその子羊の純血を撮影終了まで守ることができるのだろうか。それとも、ロメオとベリアルに芸術の神への供物としてその身体を捧げられるのか。そのゆくところは、ロメオの睫毛、ベリアルの耳毛、そしてジュリアンのうぶ毛しか知らないのであった。
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