午後十一時
店内にはホステスたちの笑い声とピアノの音色が響いていた。
私は貴方の席へ向かうため立ち上がった。
左側に深くスリットが入ったデザインは、歩くたびに見え隠れする美脚を、よりセクシーに見せる。
自慢のロングヘアは今日も優美に巻かれ、その艶やかさは光沢あるビロードのよう。
まろび出そうな豊満な胸元はパールの粉を散りばめたように、内側から光を放つ。
ダークスーツの男性客と同化しないよう、鮮やかな真紅のドレスで熱帯魚のごとく優雅に店内を行き交い、笑いさざめく。
タキシードに身を包む熟年ピアニストが優しいボサノヴァの調べを弾く。
貴方はいつもの席で私を待っていた。
ごめんなさい、お待たせ致しました。
いらしてくれて、ありがとう。今日は少し混んでるの。
貴方は優しく微笑んで、待ってたよ。
さぁ、ここへ座って。
私は貴方の右横に座り、水割りを作る。
乾杯 グラスを持つ白い手は、陶器のようにすべらかだ。指に光るダイヤの指輪も、ガーネット色に艶めくネイルさえもが脇役に見えてしまう。
今夜も綺麗だね。貴方が私の腰に手を回す。
貴方は私の左腿に手を置いて、私の耳元でアフターに誘い出す。
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