AWA
このページをシェア

説明文

そんなこんなで、いろいろありまして…。高校受験のために流血と血溜まりの国から帰ってきました。帰ってきて感じたのは、東京は何でもあるところで、いろいろな妖怪や怪異があるところでもありました。まず、朝の半蔵門線の満員電車にやられました。静かな車内のギュウギュウしたところにやられました。最初は降りる度に可笑しくて笑っておりました。また、渋谷ホームから上り下りする人人人のドロドロした群れの流れ、これには吐き気がしました。彼らは、ただただ自分の意識を捨てて、流れてゆく瓦礫のように見えました。だって、それが流れ着く先はつまらない会社や学校なのでしょう?墓場の棺桶に流れ込む泥のようなものです。という訳で、高校へ行く前に息抜きで松濤や井の頭公園などを散策してました。大邸宅や高級マンションを見上げては、どんな悪い奴がどんな悪い商売でこれを建てたのか…。という想像をして歩いてました。一方で貧富の差が激しい国から帰って来たので、貧乏にはなりたくないと公園の池のカモ達をベンチから眺めておりました。これすなわち、東京にて私は、居場所が無くて精神的にホトホト困窮していたのです。そんな中、ある朝、深夜の映画の帰りで、朝の山手線に乗っていると、前の席の40代頃の頭の薄い、眼鏡をかけているサラリーマン風の人がこちらを見て、真面目な顔で私に指3本を見せてくるのです。怪訝な表情を私が返すと、指が4本になりました。実に噛み合わない非言語的な交流でした。顔を背け、会話はそれっきりとなりました。その後も視線を合わせてたら指何本までいってたのか、自分を自分自身でオークションにかけるのは、こちらに需要がある限り興味深いものです。また、ある日の中央線では、やはり、40代前の男に突然手を引かれ食事に連れていかれそうになりました。改札を出たタイミングで逃げました。だいたい私が20歳を過ぎるまで、そんな感じの妖怪と怪異が出現していました。男からされるのは何故か慣れましたが、通学途中の朝の井の頭線で女の人からもそういうことがあった時は、何となくその人の顔をまとも見ることが出来ませんでした。何となく勘で、この人はオークションでは無くて、逸脱する行為に心地良い一方的な関係を感じているのだと思いました。ですが私は、20歳を境に妖怪にとって需要が無くなってしまったのです。供給しなくて良かった、と思いました。抜け出せなくなるかもしれないから。結局、自分で出した密かなる結論は、自分では分からないけど、自分が何かのシグナルかオーラを出しており、怪異に引き込まれる。それ故に自分は人間の種別として性的志向の強い性的人間だということでした。需要が無くなるまでは…。あと、朝に妖怪が多いのは身体的密着度が高いこと、だけで無くて、ドロドロの瓦礫の流れから妖怪となり怪異の世界で自分を生かしているのかとも思いました。それがある日を境に妖怪とも怪異とも縁が無くなり、この東京という世界の中で、私自身の足元を見ると寂しくなりました。自分も妖怪か怪異の類いになってしまったのでしょうか。ドロドロと地下に瓦礫になって流れてゆくのに慣れた頃でした。
…もっと見る
はじめての方限定
1か月無料トライアル実施中!
登録なしですぐに聴ける
アプリでもっと快適に音楽を楽しもう
ダウンロード
フル再生
時間制限なし