織田さんの中で、多くの人に届く「ポップス」の定義があるのでしょうか。
織田:とにかく人を一発で振り向かせるものがポップスだと考えています。世の中では“心地よく作られたもの”がポップだと勘違いされがちです。でも、ビートルズで言えばポップなのは明らかにジョン・レノン。彼は一発芸が大得意で、心地よく聴かせるような音楽の構築は苦手なんですよ。一方、ポール・マッカートニーは構築の天才で、ソロになってからは“職人的な心地よさ”の方に向かってしまい、あまりポップではなくなった。ビートルズ時代は、身近にジョンというポップの大先生がいたから、ポップな楽曲を作ることができたんです。「Help!」といきなり言われたら、ハッと耳がいってしまうでしょう。見るものでも聴くものでも、ポップアートというものは、なるべくシンプルな何かにすべてを象徴させ、その一発で人の注意をひくものなんです。
――意図的に構築するのが難しいのだとしたら、上質なポップスはどのように生まれるのでしょう。
織田:理屈ではなく、瞬発力で突然浮かぶものです。そこから先の増改築は理屈でやれるところですが、ポップの本質的な部分は“浮かぶかどうか”だけ。人に対する影響力やインパクトというのは、だいたい簡単に作ったものの方が大きいんですよ。じっくり煮詰めて作ったものは、自分としては愛着が湧くけれど、ポップスとしての力は弱いですね。
…もっと見る