恋しい愛しい大切な人へ、儚く散っていく切なる願いを哭く声がはらはらと舞う…
今まで選曲していない曲で聴きたいものを集めたらこんなテーマのプレイリストができました。
哀愁をはらんだ疾走感と黒猫さんの伸びやかな歌声に魅せられる「朧車」、おそらく『源氏物語』の六条御息所を意識されているのではないでしょうか。車争いといえば真っ先にイメージされる彼女、生霊になったり妖怪になったりと悪い印象が深いですが、光源氏への一途な想いは健気で本来とても愛情深い人なのだと思います。高校~大学時代に専修研究するほど源氏物語に傾倒していたことに加え、初めて陰陽座の曲を聴いたのが『煌神羅刹』だったこともありとても思い出深い曲です。
黒猫さんのこぶしの効いた可愛らしくも色っぽい歌唱が印象的な「文車に燃ゆ恋文」。サビのベースラインがカッコイイ!“文車妖妃”という妖怪はまさしくこのプレイリストにピッタリです。想いをしたためた恋文には強い念がこもるのでしょう。(私も瞬火さんに愛を込めたファンレターを書くたびにとてつもない念がこめられてしまっているような気が…(笑))しかし全ての恋が叶うはずもなく、悲しくも焼き捨てられてしまった恋文が妖怪となったということだそうです。“鎮魂歌”を“レクイエム”と読ませるのは陰陽座にしては珍しいですね!
瞬火さんの甘く優しい歌声が艶っぽく、包み込まれるようなあたたかさを感じる「煙々羅」。愛しい人はもうこの世の人ではなく、煙のなかにふとその人の姿を見た気がした…必ずまた来世で再び逢えることを信じる無限不変の愛に思わず胸が熱くなります。たったニフレーズしかないけれど、黒猫さんの綺麗で透き通るような歌声が神々しくすらあります。
四季折々のプレイリストでは「不知火」を選曲しましたが、関連した「牛鬼祀り」でも生贄となる乙女を恋しく思う人の切なる叫びが含まれます。曲中に使われた百人一首の二歌が残された人たちの辛い思いを代弁しているのでしょう。この曲の黒猫さんの歌声も幽玄で儚くてとても美しいです。サビの瞬火さんの歌声もまた「煙々羅」とは違った甘さがあって色っぽい。招鬼さんのデスボイス牛鬼は迫力満点ですね!
「十六夜の雨」は人と人でないものとの叶わぬ恋の曲です。“飛縁魔”が人間の男性に恋をしてしまい、愛しい人は自分に血を吸われてみるみる弱っていく…断ち切れない想いを抱えたままこれ以上いてはならないと雨の中去っていく……。なんともやりきれない思いに胸が苦しくなります。黒猫さんのだんだん燃え上がるように激情を歌う表現力が相変わらず素晴らしい!!
雷舞の守り神としていつもステージから見守ってくれている「塗り壁」。とてもかわいい。
不穏な曲の雰囲気にスロウなテンポ、瞬火さんのねっとりとした歌唱が好きな人にはたまらない曲です!この曲は恋ではないのですが、塗り壁が現れた時もしかしたら愛しい人に会いに行く途中であることもあるかもしれない!とこじつけ気味に選曲(笑)下をはらったらあんなに巨大でどうしようもなく思えた塗り壁が消えてしまった、万策尽きるまで諦めるもんじゃないな!ってことです。確かに!!クリスマスに「塗り壁」が聴ける日がくることを諦めず願い続けます!!笑
ラストにかけて組曲から二曲。
「組曲「義経」~来世邂逅」は静御前の思いの丈を黒猫さんが憑依したかのごとく歌いあげています。愛する人も、愛する子すら失ってしまって途方に暮れる彼女。沸き上がるのは辛さや悲しみ、懺悔、痛みなどの苦しい感情ばかり。来世ではそれらの感情に苛まれることなく平和な世で三人幸せに暮らせることを願う心が黒猫さんの歌声を通して伝わってきます。
最後は思い入れ深い『鬼子母神』より、「組曲「鬼子母神」~鬼哭」に飾ってもらいます。私が陰陽座にどっぷりハマるきっかけとなったアルバムの最後の曲ということで聴くだけで感極まります…!
「組曲「鬼子母神」~啾啾」と同じイントロが流れた瞬間すでに鳥肌が立ち、「はな、行こう」という静に憑依された黒猫さんの言葉に続くのは打って変わって激しく荒ぶる鬼の哭く音のようなサウンド。鳥肌総立ち、涙すら零れます。
もう逢えぬ九鬼への想い、終わらぬ忌々しき風習の村への怒り、はなと共に生きていく決意、静の表情や姿が瞼に浮かぶよう…黒猫さんの歌声は荒々しくもしなやかでパワフル、憂いと憤怒を感じます。プレイリストのタイトルに見事に合致しているこの曲で余韻に浸りながら締めくくりたいと思います。
前回作成した「狂い咲く情念の花」ともテーマが通ずるこのプレイリスト。
曲調も歌唱も奏法も様々ですが、やはりどれもが陰陽座らしさを持っていますね。個人的には黒猫さんの表現力と歌唱力にただ圧倒させられっぱなし!永遠に憧れの存在です。
これからも切なく愛しい、陰陽座らしい曲で私たちを泣かせてくださることを期待しております♪
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