黴雨に揺れた花弁の匂いに噎せ返る
残り香の様に纏わりついて離さない
ゆらり、かすんだ視界と
最後に見たあなたの横顔
この交差点はひとりで渡ったことがなかった
手前のミラー下が待ち合わせ場所だったから
それはいつからのことなのだろうか
空を見上げることを忘れてしまった
でももう決めたんだ
自分勝手なんだけど
心にいないあなたのためじゃなくて
私が幸せになるために傘を広げるね
一途に想っていたのはあの日が最後で
心は五月雨のようにひらりと移り気に
本当は与えられた世界の広さに戸惑っただけ
歩幅を揃えることは、もうないと決めていた
空が青いと、ちゃんと知っていたはずなのに
もう思い出の空ですら色褪せて過去になった
今日も傘の下を歩く
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