<エピソード>
ショパンが持病の肺結核の静養のため、スキャンダラスな恋仲にあったジョルジュ・サンドと地中海に浮かぶ島マヨルカ島へ逃避行したときのこと。病をこじらせて死の淵をさまようほど悪化した。
ある日、サンドは看病していたショパンを修道院に残して買い物へ行き、嵐のため帰りが夜中になった。彼女が帰ると、ショパンは不安に苛まれながら作曲したばかりの曲を弾いてた。その曲こそが「雨だれ」だった。
サンドの回想録に「この夜の彼の作品は、マヨルカ島のヴァルテモ―ザ修道院の瓦の上で反響する雨のしずくに満ちていたが、そのしずくは、彼の想像と音楽のなかでは、彼の心に天から落ちる涙となっていた」と書かれていた。
<曲の特徴>
ショパンの《前奏曲》は、バッハの《平均律クラヴィーア曲集》(24ある全ての調性が使われた音楽史上初の作品)にヒントを得たもの。
「雨だれ」はA・B・Aという3つの部分から成る。Aの部分は変ニ長調で優美。Bの部分は嬰ハ短調で厳しい現実を表現。全く雰囲気の異なるAとBだが、雨音のように鳴り響く同音の連打音が曲を貫く。
#2は、特にテクニックの冴える名演を中心に。
8.レニングラード音楽院において、7歳のときレアー・ゼリフマンに、その後はモイセイ・ハルフィンに師事。12歳で最初の大規模なリサイタルをモスクワで開催。1966年、16歳で第3回チャイコフスキー国際コンクールで優勝し、審査委員長のエミール・ギレリス以下、審査員の全員一致で金メダルの授与が決定。
並外れた高潔さとすばらしい個性、深い洞察力に基づく演奏スタイル。
《前奏曲》では、情感あふれながらも完璧なテクニックでショパンの音世界を見事に表現。本作は冷戦終結後の1990年の初出時、テレラマ誌のffffやショック・ドュ・モンド賞などを受賞し、“レコ芸”でも特選盤の評価を受けた。
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