Maroon 5の新作タイトルは、内輪のジョークからつけられたとアダム・レヴィーンは言う。フロントマンであるアダムのNBCオーディション番組『The Voice』への出演、2011年にリリースされた”Moves Like Jagger”が18ヶ国のチャートでトップを飾り、歴史上最も有料ダウンロードされた曲の一つとなるなど、ロサンジェルスを本拠地とするMaroon 5の活躍が表面上は非常に目立っている現状に対して眉をひそめている。
「”わかってるよ、自分たちがさらされ過ぎている状況は自覚しているよ”という意味でつけたんだ」とアダムは笑いながら話す。「みんなに言われる前に先に自分たちで言おうと思った。先制攻撃だよ。」
しかしそれについて少し考えてみよう。もし『オーヴァーエクスポーズド』がMaroon 5の持つとてつもなく高い視野の真相を明らかにしてくれるのであれば、そのタイトルは表面下で新たな意味を持つのではないだろうか?3度のグラミー賞に輝 いた5ピースバンドは、10年の間にロサンジェルスの小さなクラブでライヴを行う時代から世界で最も有名なバンドの一つへと成長した。今作は、リスクを受 け入れることに恐れを感じないMaroon 5の姿をしっかりと捉えている。
「ずっと崖っぷちに立っているような気分 だった」とアダムは言う。「僕たちは初めからほぼ完全なポップ・バンドではあったけど、それはロック、ソウル、ファンクなど色んなジャンルがルーツとなっ ていた。『オーヴァーエクスポーズド』では初めて、ラジオで流れるポップ・ミュージックを僕たちは作っているんだ、という考えを完全に受け入れている。自 分たちらしいものを作ることに恐れを感じるのはやめよう、とみんなで思えたんだ。」
その決心は、単なる 考え方だけではない。”Moves Like Jagger”では共作という新たな領域に足を踏み入れた。それまでアダムとメンバーたち(ギタリストのジェイムス・バレンタイン、ベーシストのミッ キー・マデン、ドラマーのマット・フリン、そして活動休止中のジェシー・カーマイケルに代わってキーボードのPJモートン)は、自分たちですべての曲作り を行うことに誇りを持っていた。「でも”Moves Like Jagger”はすごく良い経験になった。だからまた試してみようと思ったんだ」とジェイムスは言う。
結果として Maroon 5の4枚目となるスタジオ・アルバムでは、長年のヒットメーカーとして知られるマックス・マーティンをエグゼクティブ・プロデューサーとして迎え、ベ ニー・ブランコ(ケイティ・ペリー、ジム・クラス・ヒーローズ)とライアン・テダー(ビヨンセ、ワンリパブリック)とのコラボレーションが行われた。
「さ まざまな理由で特定の人たちと縁があって一緒に仕事をすることになる」とアダムは説明する。例えば、2010年のツアーはワンリパブリックと回った。「突 き詰めると、良い作曲者が成功するのには理由がちゃんとあるんだよね。今回のアルバムに参加した人の中で、お互い初めて会って一緒にスタジオで作業を行う 人たちが多かった。ルールの範囲内ではあり得なかったような不思議な組み合わせが僕たちは好きなんだ。」
確かにエレクト ロ・レゲエの”One More Night”やウィズ・カリファをフィーチャリングしたファースト・シングル”Payphone”を聴くと、Maroon 5をどのジャンルに分類するべきなのか悩んでしまう。ファンク調のバラード”Beautiful Goodbye”や、ハーモニーはホール&オーツの影響を受けたとジェイムスが話す推進力あるディスコ・ロック・ジャム”Doin’ Dirt”もそうである。
「”Payphone”のサビまでのカワイイ感じが好きなんだ」とアダムは話す。サビでは”お とぎ話なんてみんなウソなんだ/ラヴソングをあと1曲でも聴いたら吐きそうだよ”と歌っている。「そうすることによって曲を完全に転覆させ、聴いた人は身 を乗り出して聴き入る」とアダムは言う。
「ロサンジェルスのコンウェイ・スタジオにあるラウンジでラップトップを使っ て”Fortune Teller”を書き始めたときが一番創作意欲がかき立てられていたと思う」とジェイムスは言う。「何百万ドルもする世界でトップレベルのレコーディング 機器が用意されているのに、僕は10ドルで購入したKorgのキーボードを使って曲作りをしていた」と笑いながら話す。「それでもみんながすごく気に入っ ている曲が完成した。」
ジェイムスのコメントからなんとなく想像できるように、Maroon 5は驚くほど短期間で『オーヴァーエクスポーズド』を制作した。プロデューサーにロバート・ジョン・”マット”・ランジを迎えた2010年リリースの『ハ ンズ・オール・オーヴァー』から21ヶ月しか経っていないにも関わらずトップレベルのコラボレーターたちと制作が行われた。「今まではずっとアルバム制作 にじっくりと時間を費やしてきた」とアダムは認める。「だけど分析し過ぎたり、必要以上に複雑にしてしまう作り方はもう卒業した。良いものは良いんだ。そ れでおしまい。」
「個人的にも、そして同時にバンドとしても、新しい焦点が僕たちの中で固定された」とジェイムスは付け 加える。「バンドとしてこの始めの10年間に本当に素晴らしい経験をしてきた。しかも嬉しいことに、ほとんどの経験を実際に楽しむことができた。だけど今 の時点では、”さて、僕たちのやるべきことは?アルバムを作ること”と思える」とギタリストのジェイムスは笑う。「つまり、2007年はライヴの後にパー ティーを楽しんだけど、今では”なあ、あの曲を完成させようよ”って言うようになった。曲作りの方が僕たちにとってはエキサイティングなんだ。」
Maroon 5がリリースしたアルバムの中で『オーヴァーエクスポーズド』が「最もMaroon 5らしい作品であり、同時に最もMaroon 5らしくない作品でもある」とアダムは言う。「過去の作品の痕跡はたくさんあるし、だけど同時に新しいアイディアもほのめかしている。何よりもこの作品 は、新しいことを試すことが良いことであると教えてくれる。自分にとってラクな範囲よりも一歩外側へと常に踏み出す大切さをね。」
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