UKテクノの名門レーベルWarp Recordsの配信がAWAで遂にスタート!世に送り出された数多の傑作から、レコード・バイヤーとして日本のテクノ・シーンを支えてきた星川慶子氏が厳選しプレイリスト化!
今も根強い人気を誇るレーベル音源を星川氏の解説ともにどうぞ!
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【Warp Records】
Rob Mitchell と Steve Becketによって1989年にイギリスはシェフィールドで設立されたレーベルであり、もともとレコードストアで働いていた両氏の鋭い審美眼を通してリリースされる作品群は、当時のシーンに次々と新しい流れを提案することになる。
設立当初のレーベルを代表するアーティストであったLFOやTricky DiscoそしてNightmares on Waxがきっかけとなったブリープテクノ・ムーヴメントをきっかけに、以降レイヴサウンド全盛期となりBPMが加速したクラブ・サウンドが主流となっていたシーンに一石を投じるかの如く、ダンス・ミュージックのみに留まらないエレガントさをまとったエレクトロニック・ミュージックの提案となったコンピレーション・アルバム『Artificial Intelligence』(92')の成功で一気にレーベルとしての知名度をあげ、UKテクノ/エレクトロニカシーンを代表するトップレーベルのひとつとなる。続編として94年に発表された第2弾と合わせ、AutechreやThe OrbのAlex Paterson、B12、Black Dog Productions、Mark Pritchard、Richie Hawtin、SeefeelそしてAphex TwinことRichard D. Jamesら、後のエレクトロニック・ミュージックシーンに多大なる影響を与える錚々たる顔ぶれがフィーチャーされており、先陣としてシーンを切り開くアイコン・レーベルとしても信頼を勝ち得た。
また、フューチャー・ジャズと表現された個性派Jimi Tenor、Andrew Weatherall率いるThe Sabres of Paradise、Jaco再来と言わしめた超絶テクニックを持つベースプレイヤー/コンポーザー、Tom Jenkinson率いるSquarepusher、Autecherと並ぶエレクトロニカ・シーンを代表するアーティストであるBoards Of Canada等が参加し、エレクトロニック・ミュージックの可能性を大きく広げることに尽力した才能が集結、2000年代前半までこの流れは続くき多くの名作を輩出することになる。
そして2000年代中盤になり、!!!やMaximo Park、Battlesらバンドの参加でよりレンジの広い集合体としてのレーベル・カラーを放ち新たな方向性を示唆、更には俳優でもあるVincent Galloやエクスペリメンタル・マルチ・ジャンルプロデューサー、Steven Ellison率いるFlying Lotus、そしてアンビエント・ミュージックシーンの巨匠、Brian Enoなどの才人たちが顔を揃えることになり、絶対無二なレーベルとしてその存在感を増して行く。
10年以降にはRustieやMount Kimbie、大ブレイクをを果たすHudson Mohawkeらベース・ミュージックシーンを牽引する気鋭達が再び新たな流れを生み、更なるレーベルの追い風となる。2013年よりレーベルに参加したOneohtrix Point Neverに於いては、そのノイズ、アンビエント、ドローンといった要素を実験的でアートフォームに昇華したヴェイパー・ウェイヴサウンドで、「#OPN以降」という後続のサウンドを表現するタグまで出来上がり、本年度には映画『Good Time... Raw』のサウンドを担当し、カンヌ映画祭、コンペティション部門のサウンドトラック賞を受賞とレーベルとしても飛躍の年となった。
また、近年はレーベル創立初期を支えたヴェテラン勢の復活劇もあり、その事柄に於いても長きに渡るアーティスト達との信頼関係の深さが伺え、大きな話題を提供した。
約30年近くに渡りレーベルを運営し、テクノ色が強かった設立当初からIDM/エレクトロニカ、アンビエント/ドローン、インディーロック、ダブステップ/ベース・ミュージック/エクスペリメンタル、ヒップホップ、更にはサウンド・トラックと、カッティングエッジな目線をもって多角的にシーンを捉え、現行のシーンをリードし続ける「トップ・レーベル中のトップ・レーベル」、と言えるのがこのWarp Recordsなのである。
All texted by 星川慶子
プロフィール:星川慶子 (ミュージック・バイヤー/音楽ライター)
日本のダンス・ミュージックシーンの発展に大きな貢献をした渋谷のレコード村、Cisco Techno Shopで店長/バイヤーとして活躍。
同社が運営していたレーベルの制作物に於いてアーティスト及び楽曲のセレクションなどにも参加、音楽系ライター業もこなす。
現在はアナログレコードとCDの巨大オンライン・ショップと京都、下北沢に実店舗を運営するレコード・ショップJET SETにてバイヤーとして勤務。
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