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1930年代禁酒法時代、シカゴに君臨した《犯罪王》アル・カポネをモデルにした映画 『暗黒街の顔役』= 『Scarface』が公開されたのは1932年。 ハワード・ヒューズが製作し、ハワード・ホークスが監督したこの映画は、当時としては《アンモラル》で強烈なバイオレンス描写で大ヒットしました。 時は流れ、たまたまこの映画を観たアル・パチーノは、リメイクを思い立ち 『セルピコ』『狼たちの午後』のプロデューサー、マーティン・ブレグマンに相談します。 アル・パチーノが、『ゴッドファーザー』以来のギャング映画に戻ってくる! 大ヒットの予感に、プロデューサーは すぐに動きます。 監督は『セルピコ』『狼たちの午後』で、アル・パチーノと組んだ シドニー・ルメット。 脚本は『ミッドナイト・エキスプレス』でアカデミー脚本賞をとった オリバー・ストーン。 イタリア系ギャング映画を古臭い…と感じた二人は、主人公のキャラクターを《キューバ難民》に変えます。 マイアミにやって来る《南米からの難民》は、当時のアメリカでは得体の知れないコミュニティを持つ、謎の存在でもあったのです。 主人公のトニー・モンタナは、南米からコ〇インを密輸して 大儲けする男になりました。 物語は 1980年、キューバからアメリカ・マイアミへ渡ったトニー・モンタナはコカインの取り引きに携わる。 その働きが認められたトニーはマフィア組織の配下に収まった後、ボスを殺害。 無一文の身からマイアミ暗黒街の頂点へと上りつめ、さらにはボスの愛人エルビラも手に入れることに。 しかしその栄光は長く続かなかった……。 パリで脚本作りに没頭するオリバー・ストーンに、シドニー・ルメットはある提案をします。 「トニー・モンタナの コカ〇ン密輸の黒幕はCIAだ!」 社会派の《左派》シドニー・ルメットらしい案ですが、プロデューサーのマーティン・ブレグマンはこれを嫌い シドニー・ルメットを降板させます。 プロデューサーは『殺しのドレス』『ミッドナイト・クロス』の《第2のヒッチコック》と呼ばれていた ブライアン・デ・パルマに監督を依頼します。 デ・パルマとパチーノは、マイアミでロケハンしてキューバ移民の《空気》を掴もうとしますが、 マイアミ市行政官 デミトリオ・ペレスから 「我々キューバ系市民のイメージを著しく傷つける映画だ」 とロケーションの協力を拒否され 「密輸の黒幕はキューバの社会主義政権」 とすれば許可すると、シドニー・ルメットと逆の提案をしてきました。 また《モノホン》のギャングからの脅迫もあり、マイアミロケは不可能になります。 結局ロケ先は、ハリウッド周辺で撮影する事になりました。 デ・パルマは美術、撮影に「明るくカラフル」にと要求します。 「マイアミは、太陽、青空、海、ネオン、背広は白…、闇を基調としたフィルム・ノワールとは逆なんだ。」 かくして『スカーフェイス』は、ギンギンギラギラな極彩色溢れる映画になり 音楽のジョルジオ・モロダーの《80年代》的なディスコ・サウンド、シンセサイザー・ミュージックが《品のなさ》に拍車をかけました。 その品のなさを表しているのは、劇中で連発する 「F〇〇K!」 なんと 206連発! 数えた奴も どうかしている…… また、映画のラストシーン ボリヴィアの麻薬王 ソーサが派遣した《暗殺部隊》と対決するトニーは 沢尻もビックリの コ〇インの山に、顔を突っ込んで 「お前ら!俺とF〇C〇したいのか!」 と、何発も撃たれながらグレネードランチャーをぶっぱなすのです! こんな映画はMPAA(アメリカ映画協会)が黙っている訳ありません。 当然X指定(成人映画)。 指示されるままに デ・パルマは当該シーンをカットして再提出しますが、一向に成人指定が解除されませんでした。 プロデューサーのブレグマンは、全米興行連盟や、マイアミの麻薬取締官を集め、X指定かR指定か、投票させ 「R指定が適当」の評価を勝ち取り その結果をMPAAに持ち寄り、R指定を認めさせました。 しかし、ニューヨークのプレミア試写会で ドラッグ・ディーラーがチェーンソーで切り刻まれるシーンで、大量の観客が席を立ってしまいました。 デ・パルマの演出が上手すぎて、直接的な描写が無いにも関わらず、観客が《残酷的なシーン》を観た…と、錯覚してしまったのです。 アメリカの批評家は 「『暗黒街の顔役』への冒涜だ!」 ラストに掲げられた 「ハワード・ヒューズとベン・ヘクトに捧ぐ…なんて、恥知らずだ!」 批評家達は『スカーフェイス』を叩きまくりました。 そんな中、意外なとこから高評価が上がります。 《母の国》キューバでも、《父の国》アメリカでも差別されたトニー・モンタナの怒りを理解したのは 中南米系、アフリカ系、アジア系のマイノリティ達でした。 社会のどん底から這い上がり、札束を持ち美女をはべらせ、でっかい車に乗って 街を闊歩する そんなトニー・モンタナの姿は、彼らの《アイコン》になりました。 特にギャングスタ・ラップに於いてはこの作品のイメージはアイコンとして何度も引用され、アーティストたちの歌詞に大きな影響を与えています。 本プレイリストの①曲目、⑤曲目が『スカーフェイス』のスコアをサンプリングした曲です。 また、全世界で大ヒットしたRockstar Games社のコンピュータゲーム『Grand Theft Auto: Vice City』は、本作の影響を受けた作品として知られています。 今でも Tシャツ、フィギュアになり、ポスターは売れ続けてます。 《The world is yours. 世界はお前のもの。》 『スカーフェイス』に出てくるこのメッセージ キューバからアメリカにやってきた青年トニー・モンタナ(アル・パチーノ)は、違法な取引で成り上がりに成功し、我が世の春をつかみ取りますが トニーはやがて自滅の運命をたどってしまいます。 しかし、トニーが野心を持ちこの世界と対峙したからこそ世界がそれに応えてくれたのは紛れもない事実です。 そんな《成り上がり》に、世界中の《ボンクラ》達は憧れと賞賛を胸に、眩しげにトニー・モンタナを見つめ続けていくのです。 《作品データ》 監督 ブライアン・デ・パルマ『ミッションインポッシブル』 脚本 オリバー・ストーン『プラトーン』 製作 マーティン・ブレグマン 製作総指揮 ルイス・A・ストローラー 出演者 アル・パチーノ スティーヴン・バウアー ミシェル・ファイファー メアリー・エリザベス・マストラントニオ 音楽 ジョルジオ・モロダー 撮影 ジョン・A・アロンゾ 配給 ユニバーサル・ピクチャーズ 公開 アメリカ 1983年12月9日 日本 1984年4月28日 上映時間 170分 製作費 $25,000,000 興行収入 北米 $45,408,703 世界興収 $65,884,703 ゴールデングローブ賞ではジョルジオ・モロダー(作曲賞) スティーブン・バウアー(助演男優賞) アル・パチーノ(主演男優賞) がノミネートされた。 日本における公開は1984年4月。
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