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1971年 ナショナル・フィルム・シアターで、『権力と栄光』『第三の男』のイギリスの小説家 グレアム・グリーンは 「過去十年間で最高の作品」に セルジオ・レオーネ監督の『ウエスタン』を上げました。 その発言に対し、記者は 「以前ほど映画について 真剣に考えてない...という事ですか?」 と、質問しました。 グリーンは 「『ウエスタン』について言った事は 本気です」 と返しました。 ……記者から揶揄されるように、当時『ウエスタン』は失敗作と思われていたのです…… セルジオ・レオーネ監督は 『荒野の用心棒』 『夕陽のガンマン』 『続夕陽のガンマン 地獄の決斗』 の、いわゆる《ドル三部作》の後 念願の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』に取り組もうとします。 ユダヤ系ギャング団のハリー・ゴールドバーグが、1933年 シンシン刑務所収監中に書き、ハリー・グレイのペンネーム名義で出版された『ザ・フッズ』の映画化です。 ヌードルス、マックス、コックアイ、パッツィ、ドミニク……5人のチンピラの物語に、昔の自分を思い返し この映画化に入れ込んだレオーネですが パラマウントの親会社 ガルフ&ウエスタン社は、そんなB級ギャング映画より、ヒットの確実性の高い《レオーネ西部劇》を要求しました。 そこで『ザ・フッズ』の映画化をペンディングして、レオーネは自身のシンパである ベルナルド・ベルトルッチとダリオ・アルジェント、『続夕陽のガンマン 地獄の決斗』のセルジオ・ドナティと新たな西部劇の構成を練り始めました。 過去のありとあらゆる西部劇をつなぎ合わせた集大成のような物語を…… 3人のガンマンが列車の到着を待ちます。 キーコ、キーコと錆びた風車が回ります。 クラウディア・カルディナーレのクレジットが出てから、監督のセルジオ・レオーネの名前が出てくるまで 約10分 ... 映画史上最も長いオープニング・クレジットには音楽がありません。 ドアの軋む音、蝿の羽音……当初 モリコーネが用意した音楽は、結局 採用されませんでした。 3人のガンマンは 《ハーモニカの男》チャールズ・ブロンソン に、撃ち殺されます。 最初に流れる音楽は、ブロンソンが吹くハーモニカの音色... このプレイリスト⑥曲目『 Man With a Harmonica 』...邦題『復讐のバラード』です。 ブロンソンは、ハーモニカ奏者 フランコ・デ・ジェミニに指導を受けてます。 ブロンソンは出演を熱望されただけあって、妻のジル・アイアランドの名前がヒロインの役名 ジル ( クラウディア・カルディナーレ ) になっています。 映画を象徴するテーマ曲は、ニューオーリンズの娼婦 ジルが、マクベイン家に嫁ぐため ホームに降り立つが 誰も迎えに来ず 駅を出ていく 長いワンカット。 ( 嫁ぎ先の家族は、すでに殺されてます。) クレーンカメラが ジルの背後から上昇し、広大な西部の街を俯瞰に捉えるシーンに流れる⑤曲目の『ウエスタン』のテーマ。 エッダ・デロルソの優しい暖かいボーカルが素晴らしい👏 感動……します😭 映画は ヘンリー・フォンダ扮するフランクに 《鉄道利権》の為、嫁ぎ先の家族を殺されたジル ( クラウディア・カルディナーレ )と その犯行の罪を着せられた盗賊の頭 シャイアン ( ジェイソン・ロバーツ ) 何故かフランクに付きまとい 邪魔をする《謎のハーモニカ男》( チャールズ・ブロンソン ) が絡み合って進みます。 謎のハーモニカ男の正体が明かされ、フランクが驚きの眼差しを向けるのがクライマックスです。 レオーネは、実はOKなのに ヘンリー・フォンダに何度もテイクを繰り返します。 『荒野の決闘』(46年) のワイアット・アープ役のヘンリー・フォンダと、少しでも長く一緒にいたかったから…と言われてます。 アメリカ映画に憧れたセルジオ・レオーネが『昔、西部という所があった』という原題が示すように、《マカロニ・ウエスタン》の枠を超え、アメリカの歴史絵巻をイメージして作った《アメリカ西部劇》でした。 『ウエスタン』の撮影前に出会った『ザ・フッズ』はレオーネの作風に変化をもたらしました。 アウトロー 個人の物語から、滅びゆく人々・場所・時代への哀惜の詩 へとシフトして行ったのです。 レオーネは、その後『 Once Upon A Time ……The Revolution 』の題を持つ『夕陽のギャングたち』(71年)を撮り、監督としては13年の眠りにつきます… その間、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』の企画は 動いていき 1976年にはモリコーネと打ち合わせを重ね テーマ曲を完成させてます。 脚本は、ピュリッツァー賞作家『裸者と死者』『死刑執行人の歌』のノーマン・メイラーが担当するが、 レオーネから 「ミッキーマウス版ギャング映画」と評され ボツに⤵ 頓挫仕掛ける脚本を救ったのは 『山猫』『地獄に堕ちた勇者ども』など ルキノ・ヴィスコンティ監督の脚本家 エンリコ・メディオーリ と 『暗殺の森』『ラストタンゴ・イン・パリ』の ベルナルド・ベルトルッチ監督の脚本家 フランコ・アルカッリ。 この二人は数ヶ月に及ぶ難産の末、レオーネ オリジナル部分の1968年のシーンを含め 300ページ近い台本を仕上げました。 レオーネは、少年時代の場面の厚みを増すために、レオナルド・ベンヴェヌーチと ピエロ・デ・ベルナルディ に改訂を依頼し 脚本は、完成をみます。 これだけのボリュームの脚本なので、レオーネは《二部作》にしようとするが、 ここで《芸術 or ビジネス》が 立ちはだかります。 制作の『プリティ・ウーマン』『JFK』のアーノン・ミルチャンは、《二部作》のアイデアを拒絶します。 この頃 長尺映画のマイケル・チミノ監督の『天国の門』 (81年) は 大コケし、製作会社の『007』映画などを配給した ユナイテッド・アーティスツ が倒産したり ベルナルド・ベルトルッチの5時間超の大作『1900年』が、その長さの為 興行のメドが立たず 大惨敗をしていたからです。 アーノン・ミルチャンは クランク・インまでの1982年6月 まで、脚本にバッサバッサとメスを入れます。 製作サイドとしては、2時間半をビジネスの限界と判断していたのです。 配役は ヌードルスに ロバート・デ・ニーロ マックスに ジェームズ・ウッズ 企画当初は リチャード・ドレイファス『JAWS』と ジェラール・ドパルデュー『終電車』の予定でした。 ヌードルス 憧れの幼なじみ デボラを 美少女時代のジェニファー・コネリー、成人してからは エリザベス・マクガヴァンが その他 ジョー・ペシ、トリート・ウィリアムズ、バート・ヤング、ウィリアム・フォーサイス、チューズディ・ウェルド …… 少年時代は原作にあるが、1968年のシーンはジミー・フォッファ や、ラッキー・ルチアーノ、マイヤー・ランスキー、ベンジャミン・バグジー・シーゲル をモデルにした人物や、レオーネが ハリー・グレイと会った時のエピソードが加えられています。 完成した作品は、切り詰めて 229分になりました。いわゆる《完全版》です。 今は亡き 有楽町マリオンの日本劇場のこけら落としで上映したバージョンは 205分 ( Wikipedia によると《劇場再公開版》にあたります ) アメリカ公開版は悲劇です。 時系列順に編集され、144分にされてしまいました。 もちろん評価は低く、失敗作の烙印を押されました。 その後 失意の中、心臓病を患うセルジオ・レオーネに会った『夕陽のギャングたち』の主演俳優 ジェームズ・コバーンは、 「元に戻せばいいじゃないか」と元気づけたそうです。 その後、マーティン・スコセッシ映画基金や 資金援助した GUCCI 、各映画人の御尽力で復元。 2018年度の「午前十時の映画祭」では251分( エクステンデッド版 ) が公開。 さらに、Wikipedia によると269分のレストア版もあるそうです。 60年代半ばに セルジオ・レオーネが映画化を企画し、長い年月 不遇だった映画は 見事に甦り、本来の評価を得る事になりました。 セルジオ・レオーネ監督は 1989年4月30日 心臓発作でお亡くなりになりました。60歳でした。 映画のエンディングで見せる ロバート・デ・ニーロの笑顔は、苦労が報われたセルジオ・レオーネ監督の飛びっきりの笑顔に 私は見えます。 選曲 ①②③④『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』 ⑤⑥⑦⑧『ウエスタン』⇒『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト』
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