「七月二十八日夜與王鄭二秀才聽雨後夢作」
1.初夢龍宮賓焔然、瑞霞明麗満晴天
夢の始まりは、燦然と宝物の輝く龍宮だった。晴れ渡る空いっぱいに、めでたい錦の雲が拡がっていた。
2.旋成酔倚蓬莱樹、有箇仙人拍我肩
たちまち酒がまわって蓬莱山の木にもたれていると、わたしの肩を叩く仙人がいる。
3.少頃遠聞吹細管、聞聲不見隔飛煙
しばらくすると遠くから笛の音が聞こえてきた。音は聞こえるが靄に遮られて姿は見えない。
4.逡巡又過瀟湘雨、雨打湘霊五十絃
ほどなくさらに瀟湘に雨が通り過ぎた。湘霊が奏でる五十舷の瑟のような音をたてて。
5.瞥見馮夷殊悵望、鮫綃休賣海爲田
水神馮夷を見やれば、悲しげに遠くを眺めている。絹を売る人魚の姿も消え、みるみるうちに海が畑に変わっていく。
6.亦逢毛女無憀極、龍伯擎將華嶽蓮
華山の仙女毛女にも出会ったが、なんともうつろなおももち。巨人龍伯が華山の蓮花峰を手にささげている。
7.恍惚無倪明文暗、低迷不己断還連
果てなく続くおぼろな世界、明るんだかと思えば暗くなる。朦朧としたまま、夢は途切れたかと思うとまた続く。
8.覚來正是平堦雨、末背寒燈枕手眠
目覚めれば、なんと降り続けた雨がきざはし一面を浸し、ほの暗いともしびもそのまま、手枕をして寝ていたのだった。
(川合康三訳)
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