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説明文

女戦士は異世界に存在するものなのか。否、槍や剣を帯て、背中には弓を背負い今ここにいる。ここ神奈川県中郡潮鳴町は、町とは名ばかり。相模湾を前に海から来る人を阻むように白く高い崖が切り立ち、町を囲むように森と山がある。町の中心には岩がごろごろの荒野、強い風が南北を往復するように吹いている。ここの女たちは13ほどの姉妹団とそれに属さない孤高の女戦士たちが、時に相手を変えて目まぐるしく連合や連携を繰り返し女同士で戦っているのである。彼女らは、その曇りなき黒い目と青白い唇で高い木々や岩の上に立ち、辺りを見回し常に自分の獲物となるもの、あるいは男を探している。で、男たちはどうしているのか。男たちは緑の地より去り、白い崖に横穴を掘りそこに棲みかを見つけた。めったにそこから離れることはない。なぜなら地に出ると、女たちの獲物となるのである。まず、ほぼ射殺され彼女らの猟犬の餌となり、骨は砕かれ、殺した男の数を競う女同士の首飾りの装飾となるのであった。彼女らは男の子どもと年寄りは短剣で刺して殺す。これらは女にとって男ですらない単なる獣でしかないからである。では、彼女らや彼らはどうやって子孫を残しているのか。それは、やはり彼女らの狩りによってである。彼女らは自分自身の必要に応じて、男を狩って無力にしてから彼女の求める形にして好きにする。そして、孕んで男が産まれれば崖下に捨て、女は革衣を着た戦士となり姉妹団に入り生きる術を身に付けるのである。男が地に出るのは、女により餌で釣り出されるか、本能に狂い自らの命をかけて洞窟内の兄弟団を離れ地に上がるのである。本来その行為は兄弟団からの追放を意味するのだが、唯一戻ることを許されるのは、殺される前の男のこどもをを連れ帰った場合のみである。それが潮鳴町である。今、ここにある決して若いとは言えない男が心に抑えていた本能により地に出ることに憧れ女に憧れ、粗末な作りの武器を持ち白い崖を登り、女たちの巣の罠にかかりに出てゆくのである。生きるという本能により兄弟を裏切り死出の旅へと立ったのである。
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