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説明文

空が明るかろうと、暗かろうと、誰もが、この道に何だろう、何かを置いて進んでゆくのを感じながら、アクセルとステアリングのバランスを秤にかけて海岸線に沿って下ってゆくのであった。この道は真っ直ぐ左に太平洋、右には住んでいるもの以外には興味を持たれることの無い家々が相模湾を前に礼儀正しく並んでいる。だけど、そこの住人でさえ、この道に乗れば、誰もその街のことなんか見ないし気にしない。誰もが、大きな海と海岸線を縫うようにカーブを描く道や時折サッと見える浜辺に、はぐれて溜まった小さな海に憐れむように空が、その青をそこに映しているのに目を奪われる。あと、気をつけなくてはならないのは目の前に静かに君を迎えるように手を広げている山々。往々にして、そこが君の行き先だったりする。だから海と山並みが街を影に隠してしまう。道を真ん中にして、左は伊豆半島、右に富士山。それは、天気が良ければ誰もが魅せられる光景。でも、僕はその左側に今、住んでいる。右耳は聴こえず、左の瞼には瘤ができて、まばたきすると瞼が重い。左肩の関節には石が入っていて他人の肩と、すれ違い様に肩が当たったら、衝撃とともに重い痛みが消えることはない。階段から下に一段ジャンプすると両肩に痺れが走る…。こんな奴が道の右側に住んでいる。多分、上りでは、左側に僕が住んでいる街が道沿いによく見えると思う。壊れた体の僕と街たちが料金所のゲートを越えた先に君たちを出迎える。そこは、君が帰るであろう街にどこか似ている。
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