冥府の使用人ユピタルは様々な衣装がずらりと並んだクロークに入り手にしたメモ帳に目を落とした。
時は1978年。小学6年生の男の子か…
ほとんどの場合は普段どおり大きな翼がついた黒のスーツで済ますのだが対象があまりにも生への執着が強すぎる場合や死の意味を理解できない子供などにはあらゆる嗜好を凝らしてこちらに誘い出さなければならない。巨人ファンの野球少年には王や長島のユニフォーム。映画好きで女優になるのが夢だった少女にはファラフォーセットの金髪のかつらと白の袖無しウェットスーツなど。
今ユピタルが手に取ったのは肩から腕に黒のラインが入った黄色いトラックスーツ。ブルースリーか…これで華麗なヌンチャク技を披露してクイクイって手招きしたら彼は喜んでついてくるかな…ユピタルは手帳に挟まれた少年の写真を眺めた。人懐っこそうな笑顔とまだまだお母ちゃんのおっぱいが恋しそうな唇。
ふふ。やっぱりこれだな。
ユピタルは胸に葡萄の小さな刺繍のある白い割烹着を手に取った。
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