言葉が導くドラマ

十年くらい前、市川右近さんが演出・出演する朗読劇を観にいった。普段、音楽、派手な演出の効いた歌舞伎を演じる役者の朗読劇って･･･と思って行ったが、これが、シーンとストーリーが右近と春猿の語りだけで、ありありと立ち上がってきて、登場人物の感情がすっと胸に入ってくるのだった。脚本・プロデュースの売野雅勇は、おそらく言葉と声の無限の力で、人にイマジネーションの翼を生えさせる術をわかっている。