‘’ポップ・ミュージックを作るには街とかメディアにアンテナをはって自分の音楽と人の音楽が闘っているみたいな緊張感を持っていないとダメなんです。僕らみたいな職業作家は自分の好きな音楽を作ることが役割ではなく、ヒット商品を作るのが使命ですから。今は、ジャズとボサノヴァ、ボサノヴァとソウルみたいにいろんな要素をミックスした音楽が出てますよね。自分でこういうのが面白いと思っても、若い人がもうすでに新しいものを出しているんですよ。例えばポルノグラフィティなどの若いバンドはどうやったら売れるかをすばやく察知していて、自分達でヒット商品を作っていますからね。
僕自身最近は、音楽を聴く時もプロとしてでなく1ファンというか普通の人に近い感覚になってきましたね(笑)。つまり自分たちが作って世に送り出した「歌」がその時の若い世代に忘れられない思い出を作ったように、自分もまた若い時に聞いた歌を素直に懐かしく、愛おしく想うようになったという事です。いわゆる職業作曲家、作詞家といわれる人達はもちろん今でもたくさん活躍していますが、ポップ・ミュージックの世界では詞だけ曲だけというのもちょっと影が薄いかなって思えるのが今の実状でしょう。退職のきっかけがつかめず、悩んでいる今日この頃です(笑)。‘’―筒美京平
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