ぼくは、歌いながら転がる。
「ぼくにピッタリのかけらを探しています」 と。
体に欠けがあるので、
その分早く転がることができない。
だから途中で虫と話しこんだり、
花の匂いを嗅いでみたり。
蝶々もとまったりするし、
ゆっくりすぎてカブトムシに追いこされることも。
でも、その時が一番幸せ。
苦労して、世界中を旅した。
あるかけらは小さすぎ、
また大きすぎ、
長すぎたりした。
やっとぴったりするものに出会えても、
こう言われた。
「わたしはわたしで、自分だけのもの。誰かの欠片とかではないわ。」
そしてやっと、
ついに自分の失ったかけらに出会う日が来た。
ぴったりだ!
喜びのあまり、ぼくは駆けだす。
かけらが埋まって完全になったので、
転がるスピードが増す。
あまりに速すぎて、
虫と話すために止まることもない。
花の匂いを嗅ぐ余裕もない。
回転が速すぎて蝶々もとまれない。
ぼくは、じゃあ歌でも歌うか、
と思ったが…
あら、
かけらが埋まって完全になって、
口までふさがって歌えないや。
結局、「完全になる」 って何だろう?
その結果、何を失っただろう?
ああ、そうか!
何かに気付いた 「ぼく」 は
折角見つけたかけらを、
そっと体から外して手放した。
そしてまた、
ゆっくり転がり出して、歌う。
「さぁ、かけらを探しにいくぞ」🎵
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