ケース1 A君 年は15歳 一見目立たん存在 特に問題 無さそうな中学生 彼を“ダサ坊” 呼ばわりする奴見る目は 剥製の如く無表情 成績は上々 いわゆる秀才タイプ 及第点ばかりが並ぶ採点 体育以外オール5 皆彼が通ると 思ったあの学校 当然公立 硬質な空気漂う合格発表の当日 自我を喪失する彼の目 こうなったのは誰のせい? 翌日からの彼は角張った 六畳の部屋からほぼ出なくなった 瞬く間広がるゴシップ 知らずの内に組み立てる 自滅へのロジック 素質に固執する両親 傷心の彼に向ける目が語る 「所詮“凡人”、出来攪ないが!」 夕食の合間交わしたそれが 最後の家族の会話 <♪> ケース2 B君18歳 華麗な“ドリブル” キメては喝采浴びた 8歳から続けた サッカーも高1で退部 毎晩クラスメイトの彼女を愛撫 プレザーのポケットにはナイフ パンパンの財布 諭吉の枚数示す ハイプが変えてく彼の人格 留守がちな両親は愛情 全てピン札の金額に交換 家の玄関並ぶ別注 夜な夜な結集する仲間と摂取する 頭トバす化学系 「ヤバくねーとつまらん!」 行為の麻薬性 覚醒した目が追う対向車のライト 無免の友達と流す街道 インターチェンジ抜けて乗る高速 道徳に校則振り切ったまるで 高速宇宙船 海面照らす月明かり目がけ突っ込む かなり充血したその目 既に常用者 夜空に向け飛び立った白の乗用車 <♪> ケース3 C君はまだ胎内 外界との唯一のつながりは臍帯 あいまいな天地の中 返す返事 若きママの元へと降りた天使 お腹の中は彼の宇宙 出来たばっかの手足で泳ぐのに夢中 「まだかな? まだかな?」 この柔らかで温かな 揺り籠から旅立つ その日は突然やって来た 「準備出来たよママ! 目が回ってきた!」 お腹越しの残像と無意識の感動 抱いて通る産道 長かった十月十日 遂に通り抜けたこの真っ暗な廊下 新たな世界で待ってたのはどっかの 駅の隅にあるコインロッカー