僕たちは死にたいと思っている。 僕たちは 生きたことすらないのかもしれな い。 きっとそうさ、雨音すら、 きこえない。 風景は失明して、色は失われた。 孤独すら感じない。 夢のない眠り。 子宮の中よりも神聖な場所。 深海よりも、 どんな絵画の中よりも美しい場所。 灯りはなく、暗くもない。 どんな歌声も ピアノの音もきこえない。 夏至もなく、白いスカートもない。 僕たちはどんなものにも 触れることができない。 手紙を書く腕も視力もない。 血液が滴り、凝固することもない。 僕たちに告げる声もない。 ここには透明さ、すらもない。 永久に広がる、広大な虚空。 花束が枯れることはなく、 色褪せることもない。 産むこともせず、 死ぬこともしない。 美しさは、あるのだろうか。 僕たちにはわからない。 誰にも僕たちの邪魔はさせない。 僕たちの場所にいれちゃいけない。 美しさとはなんだろう。 そして僕たちは誰だろう。 信じることはただひとつだけ。 僕たちが唯一許せる空間。 そして僕たちが唯一許される空間。 存在しない風景。 決して侵されない僕たちの聖域。 それはたしかに、僕たちの、 サンクチュアリ。