いつもの屋台で しこたま飲んで 真夜中帰ってくりゃ何か変だ しんとした部屋には灯りがひとつ 黙りこくった女房がいる とたんに身体の血の気が引いて アルコールは一気に冷めてく なるべくさりげなく「どした?」と聞けば 「ちょっとお話があるの」 新橋のしのぶの メールを読まれたか ヘルスのサチコの 名刺を落としたか 受付のヨーコちゃんと メシ食ったのバレたか もしかして10年前の総務のナオちゃんか 笑ってごまかすレベルじゃない 酔っ払ったふりして逃げ切れない シラ切り通すか土下座に行くか いきなり押し倒してごまかすか The word of the Devil 悪魔の言葉さ 「話があるの」わーっ! 聞きたくない The word of the Devil 地獄の入り口 勘弁してくれ No!魔が差したんだ とにかくタバコで気を落ち着けて ちらりと顔色見りゃかなりの非常事態 何も言わずに差し出した紙切れは 先週初めて行ったラブホの領収書 「なーんだ、そんなことかハハハ」と笑い飛ばしながら かつてない速さでアタマを働かせ ちょっとの乱れも許されないトークで 人生最大の修羅場に突入か 「たまたま酔っ払ってうまくいったんだって! いいじゃねえかダンナがもてたらウレシイだろ? 男は息抜きが必要なんだよ!」って そんな本音は死んでも言えない The word of the Devil どうしてそんな冷たくなれんの? 「話があるの」わー! 話なんかないーっ! The word of the Devil 地獄の入り口 勘弁してくれ So! 魔が差したんだ!