古いカメラぶら下げて 飛行機雲を追い越した 狭い畦道を抜けて 最後のシャッターを切る 赤い自販機 無人の駅 汗をかいたスポドリ 湿気った真夏の風が ショートボブを揺らした 通行止めのトンネルも 閑散としたアーケードも 坂だらけの通学路も ずっと 変わっちゃいないのに 時計の針に追われて 私だけ季節を巡る 身長も胸も まだちょっと 小さいけれど 寄せては返す波間に 心が攫われれば この憂いも ゴミに出せるのに 下校途中のランドセル 呆けた音の縦笛 水溜りを駆け抜け スカートの裾を濡らした 振り返ることもしないまま 入道雲を追いかける その後ろ姿が眩しくて ふっと 透明な夏に溺れたんだ 大人になんてなりたくないな 子供のままで 何も知らずにいたいな 不細工な作り笑いが 板について弱った 虚ろな眼で 17時のチャイムが 鳴り止むのを待った あぁ もう時間かな 西日が差した車窓に 映り込む夏の幽霊 後悔も失敗もない 生き方がしたい 古いカメラを抱えて 飛行機雲を追い越した 「まだ此処に居たい」 時計の針に追われて 私だけ季節を巡る 身長も胸も まだちょっと 小さいけれど 寄せては返す生活に 心が攫われても このフィルムは夏を憶えてる