馬鹿なことを言う人がいるが、 世の中に、 仏陀のように死ねると 思う人がいる。 それはとても悲しい誤解なんだ。 死んで、白骨になって、 風に吹かれて、 散るだけが死ぬことではない。 「生・老・病・死」を知らなくて、 仏陀のようには死ねないよ。 これを「四苦」と言うんだよ。 「生」とは生まれる苦しみ。 「老」とは老いてゆく苦しみ。 「病」とは病で苦しむこと。 そして歳を取ると、 「死」を恐れて苦しむ。 だけど、それは悟ってないだけだ。 土葬にされて、 棺桶の中で、 何十年も何百年も、 寝ているわけじゃない。 火葬にされて煙になって、 人生が終わるわけじゃない。 この肉体はボロ車のように、 やがてガタガタになって、 壊れてしまうけど、 死んでも魂は永遠さ。 天上界で生きてこそ本来の人生さ。 そこから苦しみつつ この世に生まれて、 泣きながら生まれてきて、 そして「四苦八苦」を味わうのさ。 愛欲の苦しみ、 それを経験する。 憎しみ合うような人と出会い、 愛しい人と別れる。 五官の煩悩は燃え続けて、 苦しい肉体が自分を振り回す。 だけど「求不得苦」。 求めても得られない苦しみこそ、 この世の本当の意味なんだ。 だから全てを求めちゃいけない。 全ての苦しみを人生の砥石として、 生き抜き死んでゆけ。 それが仏陀のように死ぬ ということだ。 だから煩悩多き者よ。 仏陀のようには死ねないよ、 死ねないよ。