春を目指して歩いていました。 あたり一面を雪が覆った長い長い冬 の景色は、 白すぎてまるで真っ暗なトンネルの 様でした。 草木芽吹く暖かい春の訪れは まだかな、まだかな、 と意識しないと希望の光が絶えてし まいそうで、 不安で仕方なかったのを覚えていま す。 1人に慣れた頃、 一軒の小さなお家を見つけました。 中には橙色の暖炉と、 僕より深い色の孤独を見に纏った人 が1人いました。 その人は凍えた僕に暖かいスープを くれました。 身体の芯がふくらんだ頃、 話を聞いて貰いました。 不安だったこと、寂しかったこと、 もうこのトンネルは抜けられないん じゃないかと思ったこと。 その人は 「うん、うん、 そっか、大変だったね」 と、凄く優しく言ってくれました。 僕は涙が溢れそうでした。 何日か、何週間か、 何ヶ月かそこにいました。 そのお家は何故かとても安心したの です。 あったかかったし、優しかったし、 美味しかったし、幸せでした。 しばらくして、 僕はまた春を目指して歩き出すこと に決めました。 最後に今までありがとうと伝えると 、その人は僕に笑顔で言いました。 「1人じゃないからね」と。