僕が初めて 胸をときめかせた 小学四年の隣の席の女の子 髪の毛を分ける仕草 教科書をめくる指 体操服の姿 色気っていうのかな あの頃、校庭の シュロの木は揺れていた きっかけがほしいな 上手く喋りたいな あの娘シャーペンの芯を 無くしたみたい 僕のをあげるよ 「ありがとう」の言葉 胸がドキドキ 知らん顔で空を見る あの頃、校庭の シュロの木は揺れていた あの娘の顔には 少し陰があった 話すようになって やっと理由がわかった お父さんが病気で 入院しているらしい お母さんと二人で 生活してるんだってね あの頃、校庭の シュロの木は揺れていた その白いブラウス 自分で洗濯 いつもの夕食 一人で用意してたよね 君の家が知りたいな 放課後 後を尾けた ランドセルに家のカギ 一人で開けてたよね あの頃、校庭の シュロの木は揺れていた 授業の途中であの娘が帰った 三日も欠席 窓の外はいつものまま 先生が言った 亡くなられました あの娘のお父さん 亡くなられました あの頃、校庭の シュロの木は揺れていた クラスで葬式に出た あの娘結んだ唇 僕たちの顔を見て 少し開いた唇 膝に傷、赤チンの 僕を高い坂の上で あの娘が見下ろして 笑ってるような気がする あの頃、校庭の シュロの木は揺れていた 朝、黒板の前 先生と彼女 お母さんの田舎に 引っ越しするんだってね 授業中の横顔 サリーちゃんの筆箱 遠足のときの笑顔 僕にくれたキャンディー 帰り道、夕日を見て 初めて悲しい 涙が溢れてきた 女の子の事なんかで あの娘が気になるから あの娘が好きだから あの頃、校庭の シュロの木は揺れていた 僕の隣の席はポツンと空いたまま 机の上を見ると何か落書き コンパスの芯で 多分、掘ったんだろう 小さなチューリップが 3本刻まれていた あの頃、校庭の シュロの木は揺れていた 今も、校庭の シュロの木は揺れてるのか