観測史上最大の空っぽの夏 例年通り暑さと2人の僕 君の詰めがけの置き土産を尻目に A6版の宇宙へ帰る 通学路を少しそれた回り道の先 そこに咲いていた ただそれだけだった 背中合わせの2人を笑顔で見下ろし 君が振りまくは命の欠片達 宙に舞うその一つにふと手を伸ばす 右手がつかんだ温度に背筋が凍る 何気ない顔で手のひらを見つめ 目を閉じてそっと地面に置いた 朝を知らなかった朝顔のように 春を拒んだ蕗の薹のように 僕は君を知らずにいたんだ 春と知らなかった三月を 名付けるように ここに君は現れた 夏の足音に浮かれ気分の街を眺めて 自分の事のように君ははしゃぐ 背中合わせの2人を今日も見下ろし さぞ楽しそうに降らす命の欠片 宙に舞うその一つにふと手を伸ばす 思わず両手でぎゅっと握りしめる 一つ残らず拾い集めて抱きしめれば 僕は君になれるかな 朝を待ち焦がれた朝顔のように 雪解けを待つ蕗の薹のように 僕は君を求めていたんだ 春を待ち焦がれた桜のように 君もずっと待っていたと 僕はただ知らずにいた 朝に咲くと決めた朝顔のように 雪を解かした蕗の薹のように 僕は君に出会いに来たんだ 桜が次の芽を眠らせるように それを春に咲かせると決めたように 君は僕に出会いに来たんだ ここにいない僕らを皆殺しにして 今ここで息をする 観測史上初の2人の夏 とうに散り果てた花はまだ僕らを 囲む 同じ桜を探して出会った2人 僕らの夏をさあ始めよう