殿の無念を 晴らしもせずに 明日は仕官を すると言う 恨みなみだの 瑤泉院(ようぜんいん)が 送るうつけの 内蔵助 外は師走の 雪に日暮れる 南部坂 「読みとうもないが、 これが大石の持参せし書状か。 何 明十四日寅の刻 我ら同志一同 吉良邸に 討入り致すべく候 ええっ」 大志うれしや 連判状の 名前 一(ひい)、二(ふう) 四十七 親も子も捨て 愛しい者と 縁を切っての 忠義立て 殿もあの世で 泣いて居ようぞ 泉岳寺(せんがくじ) 「内蔵助 そなたの 真実(まこと)の心も読めず、 口汚く罵った私(わらわ)は この世の中の誰よりも愚か者じゃ。 さぞや 辛かったであろう。 口惜しかったであろう。 どうぞ どうぞ 許してたもれ のう 内蔵助!」 出来ぬ助太刀 女子(おなご)の身なら まして仏に 仕える身 首尾を祈って 瑤泉院が 浴びる師走の つらら水 雪の明日は 晴れて呉れるか 南部坂