冬ざれに冴え凍る雪の花を、 唇に寄せて添ひ居る時。 やをら傍を臥し聴けば安らかな息。 風花が忍び泣く――。 抱き締めた腕さえ、 擦抜けてしまうのか。 言の葉までも届かぬ、睦の月――。 独り枕に、冷ややかな白い頬が 震えて沈めば、心寂しき。 往昔を初夢に見て落涙する背中に、 果て無き残心を――。 抱き締めた腕さえ、 擦抜けてしまうのか。 言の葉までも届かぬ、睦の月――。 幽玄に消えた俺の名前を 呼び続ける御前は 「忘れられぬ、忘れられぬ。」と 泣きじゃくった。 其の震える肩の傍で 何も出来ずに居る俺が、 御前に出来る唯一の事は――。 抱き締めた腕さえ 擦抜けてしまっても、 御前を愛し続けるという事。 ――此の魂が消えようと、 御前を愛している。