人に弱みは見せぬよう、 生きてきまして、 人に涙は見せぬよう、 笑ってまして、 一人で生きていけると、 そう信じてまして、 そんな僕に近づいてくる人影が、 一つありまして。 涙で濡れたこの僕の足元に、 君は長靴も履かずにやってきまして 、 「服が汚れるよ、ダメだよ。 」そう忠告しても、 まだ傷も乾かぬ僕の場所までやって きまして。 「僕のことなど何にも知らないくせ に!」そう君を追い払っても、 『知らないから、わかんないから、 側に行かなきゃって思ったの!』っ て言った。 そうして、 上から下まで汚れた僕の腕をとり、 『コインランドリーに寄ってから銭 湯に行こっ!』って行ったんだ。 そして僕に、そう僕に、 その言葉をくれたんだ。 『大丈夫。』 そう、たった三文字の台詞だ。 根拠なんかなかったんだろう? だけど僕はどうして泣いちゃったん だろう・・・ 『大丈夫。』 そう、 本当は根拠なんかどうでもよかった 。 ただ君は、少なくとも君だけは、 僕を大丈夫だと信じてた。 それだけで・・・よかった。 「どうせ俺なんてこんなもんさ・・ ・」そう呟いても、 「夢で飯は食えねんだよ!」って腐 っても、 「精神的には人間みんな一人で生き ていける。」と毒づいても、 なんてこった、 君の口から出た言葉は・・・ 『だからどうしたの?』 そして僕に、 その3文字をくれたんだ。 『大丈夫。』 そう、 僕はきっとそれが欲しかった。 あの時流れた涙は何だったんだろう 。 いったい僕は何を我慢してたんだろ う。 (大丈夫・・・)そう? 本当はもうダメだと思ってたんだ。 だけど君は冷めた顔で、 僕を三文字で抱きしめた。 『大丈夫。』 そう、たった三文字の台詞だ。 根拠なんかなかったんだろう? だけど僕はどうして泣いちゃったん だろう・・・ 『大丈夫。』そう、 本当は大丈夫かなんかどうでもよか った。 ただ君は、少なくとも君だけは、 僕を大丈夫だと信じてた それだけでよかった。