小さな酒場の帰りだった。 いつか寄せ合っていた 二人の肩に、夜霧が降っていた。 可愛かった、可愛かったんだ。 街角へきた。別れられなかった。 はなせなかった。 たまらなくって いとしくて 何にも言わず 口づけた 可愛い唇(くち)に 残ってた エンゼル・キッス 桃色の ああ たった一度の 恋の夜 あなたは泣いていた。 「ごめんよ」と云えば 「いいの」と、 あなたは云ってくれた。 でも、「好きよ」とは 云ってくれなかった。 忘れられない いまもなお あなたの甘い 唇が 薄紫に 霧ふれど さよならさえも 言わないで ああ どこへ消えたか 恋の鳥 恋に悲しく 身をまかせ 流され泣いて 街ゆけど 酒場のドアはひらくのに エンゼル・キッス あの女 ああ たった一度の 恋の夜