波間を走る光る風が 波打ちぎわまでよせてきて すくにも青いとどきそうな空と この指につづく海がある 男は粋な台詞をさがす 女は静かに待ってる ふたりでつくった砂のお城 ここまで歩いてきた足跡は いつしか風にかき消され ビンに詰めた二十歳の形見 白いしぶきに運ばれた 男は過ぎゆく時に気づく 女は過ぎない時を祈る ふたりでつくった砂のお城 足もとにとどく夏の残り香は 水に濡れた麦わら帽子 波の影に崩れてゆく城は 指のすき間からこぼれる日々 男は立ち去ろうとする 女は泣きながら聞く 遠い夕なぎ 男は立ち去ろうとする 女は泣きながら聞く 遠い夕なぎ