行き場を失った片方の手は ポケットにしまいこんだ 「感触」 =自分のものじゃないという違和感 シャボン玉は消えた すこしずつ あなたとの思い出も 夜が溶かして行く 汗をかいたグラスは 肩で息をしていた スマホを握るもう片方の手は アルバムをスクロール いつかは見返すかもと消すのを躊躇 シャボン玉は消えた すこしずつ あなたの温もりも そよ風にさらわれて 冷たくなった手のひら これが本当の私 スペクタクルな小説みたいに 手のひらで転がして このままもう少しだけ サイフォンコーヒーが眠りから 覚ます前に あなたとの思い出も 夜が溶かして行く 汗をかいたグラスは 肩で息をしていた