『おかあさんの珈琲のうた』 まだ薄暗い 街の隅のキッチンの灯り 白い湯気がゆらゆらのぼり コーヒーがぽたぽたと落ちる 慣れた手つきで刻む包丁の音と こんがりと焼けたパンの香りが朝を 知らせる 夕べの口喧嘩のことは 忘れたふりして 早くご飯を食べなさいと私を呼ぶ声 おかあさんの入れたコーヒーは ほろ苦いけどどこか優しくて きつい言葉の割りにはいつも 背中押してくれた 苦手だったはずのほろ苦いあの味が 今は恋しくて あなたの笑顔思い浮かべながら キッチンに立つの 薄いオレンジ色差し込む キッチンの窓に 背中向けて行ったり来たり冷めた コーヒーがひとつ 今日はこんな日だったと話す私に ちっとも振り向きもしないけれど 返事してくれた 「冷めた コーヒーなんてまずいよ」っていう 私に 「大人になればわかるのよ」って 笑っていた おかあさんの入れたコーヒーは ほろ苦いから嫌いだったのに いつの間にかこの苦い味が 愛しくなってた コーヒーに写る 私とあの頃のあなたが重なる 小さな背中思い出しながら キッチンに立つの お母さんの入れたコーヒーは ほろ苦いけどどこか優しくて きつい言葉の割りにはいつも 背中押してくれた 苦手だったはずのほろ苦いあの味が 今は恋しくて あなたの笑顔思い浮かべながら キッチンに立つの