過ぎた車の静けさが 僕を一人にさせたころ 名前も知らない 遠い山に憶えた小さな怒り その頃の僕は君には きっとおかしく見えただろう 何も伝わらないのに 何から伝えればいい 時代に華を添えたくて 筆を執っていたわけじゃない もう君は分からなくていい 久々に煙草をもらって ベランダで息を吸いこむと 昼の月が動いて見えて すべての悩みが消えてゆく 雑に畳んだ雨傘で 水たまりを突いて帰る子供 「あれは私に似ている」 それでも君は笑わない 時代に華を添えたくて 筆を執っていたわけじゃない もう君は分からなくていい でも今日だけは会いにきて 今日だけは 星の図鑑のかわりに 夢中で夜を越えさせて 消えない嘘を見破って いつか突き放してくれ 突き放してくれ 突き放してくれ