時計は無言でまわるけれど 面影ばかりは消せないね 都会がくれた粋なはからいさ ラッシュのホームで君と 冬の色の風に吹かれた 落ち葉たちが 通りを走ってゆく 幸福みたいで ホッとしたよ 「まあね」と笑った横顔の 淡いかげが ショーウィンドウに映ってる ぼんやりみとれていたよ 時が刻む深い淵を 埋めつくせる言葉は無いんだね つい「お前」と呼びかけそうさ 昔の口癖でね 話すことは 山ほどあるはずなのに今は 話題も途切れたまま 時計に視線を落とすたびに 待ってる誰かを暗示して 都会がくれた罪な偶然さ 「食事はどう」って聞いた 立ち止まって 一瞬困った表情さ じゃあ 引き止めて御免 枝を離れたふたつの葉は 風に散るしかない