引き出しの奥で 眠るアルバム セピア色のきみが やさしく微笑む どんな声で僕を 呼んでくれたっけ 思い出そうとしても 霧がかかる 並んで歩いたはずの 公園のベンチ 揺れていた木漏れ日も 今はもう遠い 必死で手繰り寄せるほど 輪郭はぼやけて 「大切」だったことだけが 胸を締め付ける あんなに、あんなに 心に刻んだ日々さえ 指の間をすり抜けてく 砂の城のように お願い 時間よ止まれ これ以上奪わないで きみの名を忘れてしまう そんな日が来るのが怖い この温もりだけは 消えないで きみが好きだった歌 街角で流れても 懐かしい気持ちと 寂しさが滲むだけ 口ずさもうとしても 途切れるメロディー 僕の心はもう 穴だらけの網のようだ 些細なことで笑い 喧嘩もしたあの日々 まるで他人事のよう 映画のワンシーン 「幸せ」だった記憶が 僕を独りにする 薄れていくことが さよならより悲しい あんなに、あんなに 抱きしめていた想いさえ 音もなく降り積もる埃に 埋もれていくようで お願い 誰か教えて どうすればいいのだろう 皺くちゃの手で写真撫で 「誰だっけ」と呟くのが悲しい この愛しさだけは 消さないで もしもすべてが消えたら 僕じゃなくなるようだ きみがいた証はもう この胸の中にしか無いのに あんなに、あんなに 心に刻んだきみのこと 記憶とは残酷だね すべてを過去にしてしまう お願い 神様がいるなら この願いを聞いて きみの名を忘れてしまっても この涙の意味だけは この温もりだけは 僕が僕でなくなる日まで 残して…