小さな部屋にぽつりと ひとつ物憂げな肖像画 思わず歩みを止めた 絵の中の目と目が合う 彼女は瞳で語り 昔は良かったと嘆く 過去に置いてきたままの 誰かを想うのだろうか 帰らぬ人よ まだ聞けないけれど いつになったら悲しみは癒えますか 白く塗られて冷えた壁を見つめ 戻らぬ人を待ち続けてる 今も いくつも季節は巡り 街並みがだいぶ変わっても 同じ場所で動けない 絵の中で彼女はまだ 懐かしい友に会えたような気持ちになるのは 瞳の静かな青に自分を重ねてたせい 帰らぬ人よ 今聞かせて欲しい 過ごした日々を忘れてもいいですか 時の波間に身を委ねてみたい 漂いながら辿り着く岸辺まで ささやかな別れは次から次へ これ以上埃にまみれてしまわぬようにと 小さな部屋にぽつりと 未だ物憂げな肖像画 彼女はもう語らずに遥か遠くを見ていた 帰らぬ人よ まだ愛しい人よ 記憶の中で眠れよ ゆめ安く 時の波間に揺れ漂いながら 目を閉じたなら時々会いに行くわ