潰れた煙草と老人 仰向けに倒れ星空に昔を叫んだんだ 煙が光をなぞる 乾いた唇に煙草が張り付いて 火種が飛び散る 「兄さん ありがとな だけど一人で帰れそうだ 俺の部屋は 見せられたもんじゃねぇのさ 落ちぶれちまったんだよ何もかも どうにもならねぇんだよ」 ヤモリが笑う 潰れた煙草と老人 ハイエースの荷台に乗せられて 幻と喋る おそらく愛した人 暗闇とゆりかごが 映し出した還らない日々 「兄さん ありがとな もう着いたかい?助かったよ 俺の部屋はそこの路地を入った所だ こんな汚ねぇゴミだらけの道を 歩かせてすまねぇな」 ヤモリが笑う 「おやすみ ドアを閉めるよ とりあえず寝たらいい」 裸電球スイッチを探したのさ なぜだろう 俺は壁にかかった写真を 見ないフリをした ヤモリが笑う 軋んだ廊下を戻る 滴る水がシンクを叩き ヤモリが踊るんだ 滴る水がシンクを叩き ヤモリが踊るんだ