漂流している 秋から冬へさまよっている 荒川から隅田川を渡り ゆるい坂道を登っていく 夕暮れの飛鳥山団地 焼けついた甘い匂い ガムテープで補強したサイドミラー に映る子供たちはまぼろし 鋭い風が吹いている 今日も夕暮れはゆがんでいる スピーカーの音は 絶望的に歪んでいる 石焼きいも 高度に成長した都市 燃えつきた地図 危険物取扱いの免状 喫茶店のマッチ からし色のハンチングキャップ ダイハツ 軽トラック 独り言を呟く 吐き出した息で視界が曇る 今日も夕暮れはゆがんでいる 高島平から光ヶ丘団地 練馬富士見台 駅前ロータリー 男と女と老人と子供 すべてが赤色に染まっている 針金が刺さったような 鋭い痛みを感じている 時速千二百キロメートルで 思い出が通り過ぎていく 台所の換気扇が回っている なにかの魚を煮た 生臭い匂いが漂っている 公園の遊具には使用禁止のテープが 張り巡らされている 街のあかりが灯る瞬間を目撃する 夕暮れまみれで 気が狂った男が叫んでいる 石焼きいも 今日も夕暮れはゆがんでいる 今日も夕暮れはゆがんでいる 何事もなかったかのように 子供たちが笑っている 今日も夕暮れはゆがんでいる 今日も夕暮れはゆがんでいる 今日も夕暮れはゆがんでいる 秋から冬へさまよい続けている 今日もやっぱり 夕暮れはゆがんでいる スピーカーの音は 絶望的に歪んでいる